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「2.5次元」に魅了される男たち──きつね×DDT、真剣なパロディーの作り方

「リングの外の現実のほうが怖かった」コロナが生んだ2.5次元パロディー

「2.5次元」に魅了される男たち──きつね×DDT、真剣なパロディーの作り方の画像5
写真=オノツトム

──そもそも、みなさんはどこで2.5次元と出会ったんですか?

ササ 僕は『テニスの王子様』とか『ハイキュー!!』の舞台を観に行ってて、面白いと思ってたんですよ。そこから、プロレスものや格闘技ものの2.5次元がやりたいなとずっと考えてました。

淡路 「KOUGU」の3~4年くらい前に、たまたま武道館の近くを歩いてたら人がむっちゃ並んでたんです。「あ、ジャニーズさんのライブやってんや」と思ったら違って、「とうけん……らんぶ?」って。僕、当時知らんかったんですよ。そこで調べたらえげつない人気あることがわかって、当時の単独ライブのときに「設定もおもろいからネタにしたいなぁ」って考えてました。でも大津に相談したら「いや、多分伝わらんで。まだそこまで広がってないし」って話になって、そこから寝かして寝かして。

上野 それってちょうど、ササダンゴさんが言っていた、2.5次元業界の規模が1年で5割近く成長した頃ですよね。ちょうどそのタイミングで認知されてたんだ。でも、その頃にやってたらもしかしたらここまでにはなってなかったかもしれないですね。

淡路 単独ライブで1回やってあんまウケへんくてそのまま終わるパターンだったかもしれないですねぇ。

──そして奇しくも時を同じくして20年、3月に『まっする2』で2.9次元ミュージカル、7月に『KOUGU維新』が誕生しています。

大津 そうなんや! すごいタイミングだったんや。

ササ このタイミングは、なんでなんだろうなぁ。僕らの場合、やっぱり20年はコロナがあって、今までと同じことをやっても興行が面白くならなかったんですよ。プロレスのリングで戦っても、リングの外の現実のほうが怖かったから。ちょうど『まっする』を開催した3月は緊急事態宣言が出るか出ないかの頃で、逆に今だったらファンタジックなものがつくれるタイミングなんじゃないかな、って思ったんです。極端にくだらないというか、面白いこと、エンタメに振り切ってみようというタイミングでした。

大津 2020年は2.5次元の舞台もいろいろ中止になってしまって、そのときに『KOUGU』を見て「寂しい気持ちがまぎれた」と言ってくださった方たちがいました。僕らの場合、そうした方たちが見てくれたことで拡散につながったところはあるかもしれません。

ササ 本来全然チケットがとれなかった2.5次元舞台が、コロナ禍によって配信でも見られるようになって、知っている人が増えたというのもありそうですね。

『KOUGU維新』の正しい見方を提示した有吉弘行

──お笑いファンからKOUGU維新に対して「芸人が何やってんだ」みたいな目線は感じました?

大津 ないです。『壁』で俺ら2人が最初にやったときから、「芸人以外のお笑いってこういうことするよな」「そこを俯瞰してやってるんだな」って見方がちゃんとお笑い好きに届いてたんですよね。そこが大きかったと思います。

淡路 有吉さんが見方を教えてくれました。「だっせぇな」とか。

ササ なるほど、「だっせぇな」と言っていいんだ、と。

大津 そうなんすよ。そしたらお笑いファンはその目線で見れるじゃないですか。

ササ 『壁』はいわば毎回有吉さんが見てる“御前試合”なわけですもんね。ある種、権威がつくというか。

大津 そこで「お笑い芸人がそんなことして」って目線をまず有吉さんが潰してくれるんで。

淡路 それに、KOUGU男子をやっていてもかたまりくんは『キングオブコント』で優勝してますしね。ちゃんと結果も出してる。

──『まっする』はそのあたりはどうだったんでしょう。通常のプロレス興行とはまったく違う、演劇の要素を入れた内容に対して何か言われたりすることはありましたか?

ササ 18年前、僕らが20代の頃に前身の『マッスル』始めたときは死ぬほど言われましたよ。メインイベントのクライマックスでスローモーションで試合してめちゃめちゃ怒られたり。

淡路 めちゃめちゃいいじゃないですか、それ。

ササ 『まっする』はまだスタートして2年くらいなので、まだ世の中の隅々まで行き渡ってなくて、怒られるところまでいっていないだけだと思います。

上野 『まっする』に対して穿った見方をする人が少ないのは、ササダンゴさんたちが『マッスル』の頃からずっと尖りきってたからじゃないですか? そこでそういう人は削られていって、今に至ってる。だから僕らはゆとりまっするしてます(笑)。

淡路 10年でそこまでつくりあげたんですね、すごいっす。

──ゆとりまっする(笑)。上野さんは最初にやると聞いたときはどう思いました?

上野 不安でした。『まっする』は2.9次元をやる前に1回興行があって(編註:20年1月27日の『まっする1』では2.9次元ミュージカルではなく漫才対決などを披露)、セリフを入れるのは一度経験してたんですけど、今度は歌も踊りもあるのがめちゃくちゃ不安で。準備期間も短かったんです。

大津 突然ダンスや歌をやるってなったらむずいっすよね。

上野 めちゃめちゃ難しいですね。

──2.5次元らしい演技を模索する部分もあったんでしょうか?

上野 なんとなく最初から、本家である『ミュージカル刀剣乱舞』は見ないでおこうと決めてました。

大津 あー、逆に。

上野 僕ら演技なんか素人なんで、観たら意識しすぎて「2.8」くらいになっちゃいそうだなと。プロレスラーとしての3次元により近い状態で出るために、「こんな感じかな」と自分でつくっていって見てもらって。

──ササダンゴさんは芝居の指導はするんですか?

ササ します。なんなら1回は僕が「こういうイメージで」ってノリノリでやってみせてます。

淡路 ほんまに“総合演出”や。

上野 ササダンゴさんがまずなんとなくキャラクターの性格を言ってくれるんですよ。竹下幸之介演じる思切投太郎(おもいきり・なげたろう)さんという人がいて、僕が演じる高久辛飛光がいるんですけど。

大津 いい名前やなぁ。流行りそうやん。

上野 2人が実は“いい仲”なんじゃないか? とされている設定があって、毎回オープニングはその2人だけの世界から始まるんです。投太郎さんは体もすごく大きくて、キャラクター的にもアカレンジャーみたいな人なので、そのパートナーはどんな人なんだろう? って考えるところから始めたかもしれないですね。

淡路 なるほど、すごい良いですね。

ササ 彼には「でも本当の本当は、全員から矢印が向いてるキャラクターだぞ」というのは伝えましたね。もともと竹下を真ん中に置いてつくってたけど、こっち(上野)だったなって途中で気づきました。今って『ハイキュー』も『僕のヒーローアカデミア』も、他キャラより一回り小柄な主人公なんですよね。(編註:竹下は187センチ、上野は174センチ)

大津 研究してますね~。

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上野演じる高久辛飛光と竹下演じる思切投太郎(DDTプロレスリング公式サイトより)

──『KOUGU』は演技指導は?

きつね めちゃめちゃします。

ササ どういうこと言うんですか? たとえば水川さんだったら?

大津 巻尺(水川)は、頭脳明晰でなんでも測って計算するような知的キャラなんですけど、精神的に弱い部分があってすぐ泣いちゃうんです。そういうときは紙やすり(石橋遼大)が励ましてあげる。普段は紙やすりのほうが幼くて、巻尺とはお兄ちゃんと弟みたいな感じなんですけど、お兄ちゃんが泣いたら弟が励ますっていう萌えがそこにあるという。

ササ よくできてるなぁ~。(『KOUGU維新 公式本で、イザ参ラン!』の相関図を見ながら)これこれ、この矢印の向きが大事なんですよね。

上野 関係性が途切れることはないわけですね。

ササ 『KOUGU』は出てる人たちがきつねさんに付き合わされてる設定があって、その距離感もいいですよね。

大津 設定というか、みんなほんまに嫌なんです。

ササ あっ、そうなんですか?

淡路 「ファンが喜んでるからええけど、稽古多いなぁ」みたいな感じでした。でもやらされてる側のほうが意外とミスられへんっていうプレッシャーもあるんですよね。

大津 そうそう。お笑い芸人ってマジで真面目だから「きつねさんのネタやし、迷惑かけられへんなぁ」みたいな意識で取り組んでくれるんです。しかも、みんな本当に忙しいんですよ。だからマジで練習時間がなくて、クリスマスの配信ライブ(20年12月24日開催『最初で最後のミュージカル KOUGU維新±0 ~聖夜ヲ廻ル大工陣~』)は通し稽古が当日2回くらいしかできませんでした。

ササ すごい! 歌舞伎じゃないですか。

大津 歌舞伎そうなんや(笑)。武道館ライブも全然時間なくて、ニッポンの社長の辻くんなんか大阪だし家でやって覚えてもらいましたね。

ササ 誰かが代わりにやってる映像を見て覚えるんですね。それも歌舞伎のやり方ですよ。完全に作り方が芯食ってるんだ。忙しい人たちでやってるから自然とそうなっていく。我々は合わせすぎなんだよ!

上野 僕たちは時間が足りないと思ってたけど、まだまだだったと。

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「KOUGU維新 公式本で、イザ参ラン!」(宝島社)

──『まっする』もビッグマッチ前後での開催が多いと思います。上野さんが演じる必殺技男子をはじめ出演者の方々はそれぞれ試合もあるわけで、並行しての稽古は大変そうですよね。

上野 年に一度の両国国技館大会の次の日から稽古スタート、みたいな感じでしたね。

淡路 でも大きな大会でケガした膝をかばいながら頑張って踊ってる! とかがいいんじゃないですかね。

大津 必殺技男子、すごいポテンシャル感じますよ。いつ盛り上がってもいい雰囲気ある。そこがポーンといったら、いろんな“男子”を集めて「男子フェス」ができますよね。それで必殺技男子の曲を刀剣の人が一緒に歌ったり、KOUGU維新が一緒に踊ったりしたらすごい盛り上がると思う。

上野 いろんな次元が集まるわけですね!

ササ なんとか大きなフェスを企画してもらえないっすか?

大津 俺らがっすか!?

ササ きつねさんが声かければいろんな人が集まるでしょうし、プロレスはちっちゃいステージでいいんで……。

大津 いや、必殺技男子が俺らを呼ぶくらいの大きい盛り上がりに今後なりますよ、絶対。

後編」へ続く

・プロフィール

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写真=オノツトム

大津広次(おおつ・ひろつぐ)
1989年7月24日、大阪府出身。きつねのツッコミ・ウクレレ担当。相方の淡路とは小学1年生からの幼なじみだが、きつねを結成したのは2014年。大津がウクレレ、淡路がDJとしてサンプラーを駆使する「音ネタ」漫才で一躍ブレイクした。「KOUGU維新」では、ナルシストなキャラクター・プラスドライバ(演・乙ルイ)に扮しており、2.7次元ミュージカルの世界観を先頭で体現している。

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写真=オノツトム

淡路幸誠(あわじ・こうせい)
1990年2月14日、大阪府出身。きつねのボケ・DJ担当。現在は新庄剛志のモノマネでもブレイク中で、新庄本人と共演した際に公認をもらっている。「KOUGU維新」では、べらんめえ口調でおなじみ・平やっとこ(演・淡川幸一郎)を好演。もともとダンスとアクションが得意ということもあり、パフォーマンス部分を牽引する存在である。

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写真=オノツトム

スーパー・ササダンゴ・マシン(マッスル坂井)
1977年11月5日、新潟県出身。DDT所属のプロレスラー兼、タレント兼、坂井精機の代表取締役社長。早稲田大学在学中に、DDTの興行に参加。レスラーとして活動しながら、映像班を兼務し、2004年には演劇系プロレス興行『マッスル』をスタートさせた。一度は実家の金型工場・坂井精機を継ぐために引退を発表。現在は社長業の傍らレスラーとタレント業でも活躍中。

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上野勇希(うえの・ゆうき)
1995年9月1日、大阪府出身。DDT所属のプロレスラー。学生時代に経験した器械体操を生かした、高く美しい空中技に定評がある。現在はDDT内の人気ユニット・The37KAMIINAに所属。2021年には、テレビドラマ『警視庁ゼロ係~生活安全課なんでも相談室~』(テレビ東京)にゲスト出演するなど、プロレス以外でも活躍中。

<インフォメーション>
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日時:3/29(火)~3/31(木)/会場:北沢タウンホール
「2.9次元ミュージカル」を生んだ『まっする』が今年もいよいよスタート。マッスル坂井が総合演出を務めるほか、音楽監督をRAM RIDERが担当。レスラーたちが踊って演じて戦う!エンタメの新しいカタチを目撃せよ!

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斎藤岬(ライター)

1986年、神奈川県生まれ。編集者、ライター。

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最終更新:2022/03/31 19:48
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