長寿番組に大ナタを振ったNHK、『チコちゃんに叱られる！』はどうなる？　最近の迷走に思う不安

　3月18日、『チコちゃんに叱られる！』（NHK）が放送された。北京オリンピックの影響で、金曜夜の本放送はかれこれ1カ月半ぶりだ。『ガッテン！』『バラエティー生活笑百科』など長寿番組に大ナタを振るったNHKだが、どうやら『チコちゃん』は新年度も続くらしい。あと、チコちゃんの“中の人”である木村祐一の新型コロナウイルス感染が今月5日に発表されたが、今回はそれ以前の収録だったと思われる。

　この日のゲストは、高橋ひかるとウエンツ瑛士の2人だった。

チコちゃん　「芸人さんのラジオが好きらしいわねえ？」
高橋　　　　「そうなんです、深夜ラジオが好きで」
チコちゃん　「じゃあ、木曜日なんかは？」
高橋　　　　「（岡村をチラッと見て）……」

　リトルトゥース（ニッポン放送『オードリーのオールナイトニッポン』リスナーの俗称）として有名な高橋。だが、木曜深夜放送『ナインティナインのオールナイトニッポン』のほうは聴いていない模様。

「森三中の黒沢（かずこ）は聴いてくれてるんですけどね」（岡村）

ラーメンにおろし生ニンニクをぶち込んでもスタミナはつかない？

　この日最初の質問は、「なんでニンニクはスタミナの元なの？」であった。はて、『キン肉マン』の影響だろうか？　何しろ、ニンニクを食べるとお腹を壊して逆に疲れちゃう人もいるし……と思っていたら、いきなり高橋が正解してしまう。彼女のスタミナ源は、ニンニクよりチオビタドリンクな気もするが……。

　改めて、チコちゃんが発表した正解は、「人間が火を使う生き物だから」であった。なに、その意味不明な答えは!?　どうやって当てればいいのか。

　弱った体を強くする働きがあるニンニク。数千年にわたり人間の生活を支えてきた、人類にとって非常に重要な食べ物だ。古くは古代エジプトでピラミッドを建築する際、その労働者たちがニンニクを食べていたとされ、ピラミッドからはニンニクを描いた壁画やニンニク模型等が発見されたほどだ。

　ニンニクは、当時から労働者たちのスタミナ源だった。でも、実はニンニクを食べるのは人間だけらしい。その理由は、ニンニクが持つ硫黄成分である。ニンニクは地中から硫黄成分を吸収して溜め込む性質がある。通常、その成分は細胞の内側に溜まるが、ニンニクを切ったり擦ったりすると細胞の内側から硫黄成分が外に飛び出て、ニンニク内の酵素と反応。そして、「アリシン」という成分へと変化する。このアリシンこそが、刺激性のある強いニオイの元である。刺激臭を発することでニンニクは食べにくる動物たちを避け、身を守る。本能的に多くの動物はニンニクを避けるそうだ。なるほど、吸血鬼がニンニクを苦手としているのも根拠があったようだ。

　そんなニンニクにとっての天敵は、我々である。人間は火を使い加熱する手段でアリシンを封じ込め、刺激を弱めることに成功した。アリシンは加熱すると「スルフィド」という別の成分に変化し、強い刺激がなくなって食べやすくなる。いや、でも、家系ラーメンはおろし生ニンニクをガンガンぶち込んで食べるんですけど……。というか、そもそも生ニンニクだっていい香りがすると思う。

　とりあえず、話を進める。火を使える人間だけがたどり着いたスルフィド。これが、ニンニクがスタミナ源になる理由だ。スルフィドが体内に入ると血流は良くなり、脂肪を熱に変換するよう働きかける。すると体温は上昇し、本格的な運動前の準備運動をしたときと同じ状態になるのだ。さらにスルフィドは副腎という器官を刺激、アドレナリンの分泌も促す。このアドレナリンによって筋肉内の血流は増え、活発に体を動かせるようにもなる。つまり、スルフィドを摂ると運動する準備を整えてくれるのだ。

　いわば、ニンニクはスーパーフードみたいなものだ。マラソン前に食べれば、ちょっとしたドーピング気分か？　逆に言うと、加熱しない生ニンニクは効果がないのかもしれない。漫画『美味しんぼ』を読むと、生ニンニクを食べて不調に陥るプロ野球選手のエピソードもあったし……。

　ここからは、余談。“ニンニク料理”は世界中に存在するが、今や代表格に躍り出たのはジョージアの「シュクメルリ」ではないだろうか。松屋の期間限定メニューとして話題をさらったし、今もファミリーマートに行けばシュクメルリのレトルトが売っている。一方、強烈なのは中国だ。現地の人は、箸休めに生のニンニクをポリポリ食べているそうなのだ。いや、でも、『美味しんぼ』によると生ニンニクは意味がみたいだけど……。

　最後に物申したい。今回のテーマは「なんでニンニクはスタミナの元なの？」だった。この問いなら、正解は「刺激臭の元の成分がスルフィドに変化するから」が正しいはずだ「人間が火を使う生き物だから」を答えにすると、Q＆Aがつながらない。こういうケースがこの番組には多すぎるのだ。