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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > バカリズム脚本の躍進と誠実さ

『ウェディング・ハイ』でさらなる躍進を遂げたバカリズム脚本の誠実さ

『殺意の道程』:殺人の打ち合わせって、意外に間抜けかも?

 自殺した父の復讐のために、いとこの男と共に殺人を企てるというサスペンスドラマだ。WOWOWプライムで2020年にドラマ版が放送され、現在は再編集して劇場公開された映画版も含めWOWOオンデマンドで視聴できる。殺人をテーマとした内容なのでダークでシリアスな雰囲気もあるにはあるが、基本的にはやはり「ゆるい」笑いが目立つ内容となっている。

 そのゆるい笑いのほとんどが「殺人の打ち合わせ」の過程にある。ファミレスを話し合いの場に選んでしまったり、人殺しに穴あきの包丁を使うメリットはないだろとツッコミを入れたり、占いの結果ばかりを気にしまくるなど、言動はおおむね間が抜けている。だが、実際に殺人を企てると、意外とこうした微妙な雰囲気になってしまうのではないか?というリアリティを感じさせるのは、殺人で完全犯罪を成し遂げるまでの難しさが丹念に語られているおかげでもあるだろう。

 題材だけを聞けばインモラルな内容に思えるかもしれないが、観終わってみれば「殺人ってやっぱりイヤだなあ」という真っ当な教訓が得られることも美点。それだけを取り上げればストレートすぎて説教臭くも思えてしまうメッセージも、最終的にはしっかり胸に迫るものになっている。

『地獄の花園』:派閥争いをヤンキーたちの喧嘩に転換!

 こちらも『架空OL日記』と同じく想像上のOLを描いた作品なのであるが……現実にある「社会人女性たちの派閥争い」を「バリバリにヤンキーなOLたちによる血で血を洗う喧嘩」という極端なデフォルメで描くぶっ飛んだ内容となっている。現在は、種々の配信サービスでレンタルでの鑑賞が可能だ。

 構造として上手いのは、永野芽郁演じる主人公が「普通」であることだろう。彼女は周りのヤンキーOLたちの戦いとは縁のない「カタギ」であり、極めて観客に近い立場であるため、異常そのものな設定を俯瞰して観られるようになっている。加えて、中盤には「どんでん返し」があり、それまでとは違う視点で物語を追えるようになるのも面白い。広瀬アリス演じる元カリスマヤンキーとの友情が、どのように帰結するのかも見所だ。

  遠藤憲一が魔王の異名を持つお局OLを楽しそうに怪演していたり、いきなりバラエティ番組っぽい演出になる「テレビ的な笑い」も意図的に「そういうもの」としてやっているので潔い。ただ、主人公のいちいちヤンキーマンガに例える様が(後の展開につながるものの)しつこすぎる気もするし、見た目のインパクト重視のギャグのくだらなさがよくも悪くも目立っていたりするので、好き嫌いは分かれるだろう。

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