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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 今田と東野の“正体のつかめなさ”

今田耕司と東野幸治に見る、正体のつかめなさと“わからなさ”の魅力

“東野幸治「あんまりいいたくないんですけど、すごい用意周到なんですよ」

 対して、同じく13日の『マルコポロリ!』(関西テレビ)。こちらでは、東野幸治がインタビューに答えていた。聞き手は芸能リポーターの井上公造だ。なお、この番組は東野が司会をつとめる関西ローカルの番組。月1で同番組に出演してきた井上公造が芸能リポーターとしての活動をやめるため、いわば特別編として東野がインタビューを受けたかたちとなる。

 こちらは、東野の来歴をふりかえるというよりも、「芸人をしていなかったら?」「コンビを組むとしたら誰と?」「20代の自分に伝えたいことは?」「2週間オフがあったら?」「リタイアの時期は?」といった仮定の話を中心に聞き取る構成だった。

 20代の自分に伝えたいことは、と聞かれた東野は、「これはシンプルに」と前置きをして答えた。

「これはシンプルに、『30代はもっと楽しくて、40代はめちゃくちゃ楽しくて、50代は最高やぞ』と。『とにかく、あのとき勇気ふりしぼって、吉本入ってよかったな』っていうところですよ。『楽しいことしかないよ』っていう」

 また、もし2週間のオフがあったら何をしたいか、との質問には「地球一周したいですね」と答え、次のようにつなげた。

「こう見えて、卑屈なぶつぶつ文句いうイメージですけど、意外とまっとうな元気なおじさんですよ。ど真ん中の。ど真ん中の元気なおじさん、54歳。おもしろみもなんにもない。ベタにゴルフするし。ベタに登山するし。あんまり実は人の悪口いわへんし。あんまりおもろくないんですよ。(中略)あんまり言いたくないんですけど、すごい用意周到なんですよ。登山はじめた理由も、お酒飲んだり、好きなもん食べてて、これあと5年、10年したら成人病なる、血圧あがる、運動不足になってくるとガンの発生率もあがる、ってなったときに、どのみち運動せなあかんのやったらはやめにしとこう、みたいな考えなんですよ。(中略)そういう意味でいうと、いろんなことを実は全部、先に、先に、手うってるんですよね」

 さて、今田耕司はどういう意図で「(『ごっつ』が)終わったときは『ヤバ…』と思いました」と言ったのか。それは「どっかで『よっしゃ』って思った部分」があることを伏せているのか。東野幸治は「卑屈なぶつぶつ文句いうイメージ」と対象的な「おもしろみもなんにもない」「まっとうな元気なおじさん」であることを、なぜことさら強調したのか。それは「用意周到」であることと関係があるのか――。

 テレビのなかの芸能人。彼ら・彼女らの語りの意図は、なかなかつかめない。言葉の意味は、どこまでも不確定だ。ただ、逆にいうと、多くの視聴者をひきつけるのは、そんな正体のつかめなさが魅力に転じる人たちなのかもしれない。今田と東野は、そんな“わからなさ”が魅力になる芸人の代表的な存在といえるのかもしれない。

 最後に少し『アウト×デラックス』(フジテレビ系)について。17日で最終回となった同番組は、「アウトとグッドは紙一重」といったコンセプトのもと、有名・無名の“アウト”な人たちをゲストにむかえ、トークを繰り広げてきた。ある意味で、番組が取りあげてきた人たちは、視聴者による「この人はこんな人だろう」という安易な解釈を寄せつけない人たちだったといえるだろう(特に一般人やそれに近い人たちの場合は)。

 言動の意図が読みとりづらく、登場そうそうに巨大な“わからなさ”を提示する“アウト”な人たち。彼ら・彼女らの魅力は、人の意図を読みとりにくくする(さらに当人と物理的に距離をおける)テレビをとおしてこそ、より鮮明になっていたのかもしれない。

「世の中は変わったのよ。この番組が終わるのもそういうことよ」

 10日の放送で、マツコ・デラックスは番組終了に寄せてこう語った。こういう番組は減っていくのだろうか。“アウト”な人をテレビで見る機会は少なくなっていくのだろうか。テレビ局や世間の意図は、私にはわかりかねるけれど。

飲用てれび(テレビウォッチャー)

関西在住のテレビウォッチャー。

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いんようてれび

最終更新:2022/03/25 18:00
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