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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > “戒め”から見出したスタンスの哲学

サ上とロ吉が “戒め”から見出したスタンスの哲学

答えの出にくいモヤモヤを曲にすることで昇華する

[入稿済]サ上とロ吉が 戒めから見出したスタンスの哲学の画像2
撮影=前原 猛

――このアルバムに通底するのはそういう経験論と視点だと思うし、それは「STANCE」によく表れていますね。一方であの内容は、若いリスナーにしたら「またB-BOYかよ、老害」「ヒップホップ小言かよ」って思われるかもしれない。実際、自分たちだって先輩世代が提示した「ヒップホップイズム」には影響を受けると同時に、それをマウントにも使われて疎ましく思ったこともあるし、「ヒップホップ」が拡散したいまは、もっとそう思われる可能性があるなって。それでも今回「B-BOY性」のような部分をあえて曲にした動機は?

サ上 「波物語」ですかね。まずあのイベントの開催とラインナップを見て、イベントのレギュレーション自体、俺たちがいるところとはまったく違うというのはわかりつつも、俺らはもうこういうイベントにはエントリーされないんだなってちょっとスネてたりもしたんですね。だから前日のMCバトルにrisano(lyrical school)が出てて「見に来てくださいよ!」って言われてたんだけど、呼ばれてもないイベントに行くのもどうかなって、家でゴロゴロしてたんですよ。そうこうしてたらあの報道があって。確かにああいう状況だから、ガンガンに盛り上がったり、それをインスタのストーリーにあげてしまうのもわかる。

――特に若い世代はコロナで鬱屈していたと思うし、それが解放されたらあれぐらいはしゃいでしまうのもわからんでもない。

サ上 だけど、俺にはもうコロナの時勢を考えないで遊びまくるなんてことはちょっと無理だと思ったし、そこに世代の差も感じたんですよ。それよりも真木蔵人さんやUZIさんのしっかりした態度をみると、それこそユニティの精神だと思うし、そこにヒップホップを感じて。たださらに一方で、若いやつからしたら「何がユニティだよ、俺らは遊びてえんだよ」って思ったりもするんだろうな……みたいに、かなり自分の中でスパッと答えの出にくいモヤモヤが生まれたんですよね。だけど、それを自分の中で整理しようと思ったら、この曲のリリックが生まれてきて。だから、この曲を書いて自分が救われたって部分があるんですよね。「誰が悪者」とか「ヒップホップの評判」みたいな話になってくるけど、結局まずは自分に問いかけるしかねえ、地道にやるしかねえな、って。だからこそ「この曲を聴いて学べ!」じゃなくて、「俺はこうだったし、こうだ」っていう、まさしく“スタンス”を表明する曲であり、自分たちへの戒めの曲になって。

ロ吉 聴いたとき、泣いたっす。

サ上 唐突にありがとう(笑)。でも、自分のスタンスが伝わりにくくなっているっていうのもあるかな。宇多丸さんから禅譲されて『Music 水曜TheNIGHT』(ABEMA)でえみそん(おかもとえみ)やレイジ(オカモトレイジ)と一緒に番組をやったり、DJで呼ばれれば4つ打ちとかJ-POPもかけて、『フリースタイルダンジョン』『フリースタイルティーチャー』(共にテレビ朝日系)にも出演するから「フリースタイルラッパーですよね」って言われたり。吉野もメタルでDJしたり、バンド「刑⚡︎鉄」をやったりしてるから余計にヘンな要素で見られやすい。

――「パブリックイメージとしてのヒップホップ」を体現するような方向性もないし。

サ上 でも、フリースタイルする前から俺はラッパーだったし、ポップスをかけるのも音楽バラエティをやるのも、ヒップホップがあってこそ。自分は今でも超ヒップホップだと思ってるから。今まではヘンな角度で見られることに「ふざけんなよ、俺はヒップホップだよ。恨み念法ぶつけたろか!」って思ってたし、今回も一応は言うけど、今は周りが楽しんでくれればいいなとも思ってて。だって自分がヒップホップなことは自分が一番わかってるから。

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