ななまがり「芸歴がちゃんと力になってる」、裏路地からメインストリートに進入中
#ななまがり
2016年「キングオブコント」ファイナリスト・ななまがりが、ここに来て再びじわじわと注目を集めている。ネタ番組への出演が増え、ライブ出演本数も右肩上がり。芸人とお笑いファンから長らく愛されてきた2人が、より広い場所で温かく受け入れられるようになりつつあるのだ。この4月には、すべて内容の異なる単独ライブ4公演を2日間で開催するという、超高負荷な試みに挑戦する。奇抜かつ大胆なコントをつくりあげる2人が今だからこそたどり着いた“大人”の境地とは――。
動いてみるまでわからない…最後まで油断できないネタづくり
――今回の単独は画期的な試みですね。
初瀬 プロデューサーから「コントするのにちょうどいい会場を押さえたから、何かやらないか」と声かけてもらったんです。それが4公演あって。
森下 公演ごとにネタを1本変えたり、軽く中身変えたりしながら、ひとつの単独を4回やる案も出たんですよ。でも、どうせなら4公演を満席にしたいじゃないですか。
初瀬 4回違う単独をやれば、全部来るお客さんもいるんじゃないかなと。
――今(2月下旬)の時点で仕上がりはどうですか?
初瀬 まだ編集してませんけど、ブリッジVは後半まで撮り終えてます。
森下 ネタに関しては10本ぐらいできたかな~。1公演7本だとすると28本だから、まだ18本ありますね……。
初瀬 残りの数に絶望してます!
――以前、ニューヨーク屋敷さんが「ななまがりさんは調子がいいと1日8本ネタができるらしい」と語ってました。
初瀬 いや、集まって10時間以上何も出てこなくて、「この時間は何だったんだ!?」も、もちろんあるんですよ。
森下 最近はコロナ禍で夜に喫茶店空いてないし、今までよりお仕事いただけてるんで、限られた時間でつくらないといけないんですよ。でもそのおかげで集中できてるかもしれません。
初瀬 2時間しか時間がつくれない中で逆に案が出るようになったりして、功を奏している感じはありますね。
――ネタは2人でつくるんですか?
森下 ですね。ただ、最初のネタ出しは僕で、提案したやつを初瀬が笑ったらつくり始めます。
初瀬 僕はゼロイチ出せる人間ではないんで。
森下 ただ僕目線でいうと、つくるネタ数が少ないと初瀬のハードルが上がっちゃうんですよ。
初瀬 新ネタを1本だけおろすライブだと、究極の1本を出したいと思っちゃうんです。
森下 A案出して初瀬の反応も良くて、じゃあこれでいいなと思うと、「うーん……これはひとまず置いておこうか」とスパルタモードになる。それが、ネタ数多いライブが控えているとA案B案C案全部通るんで。
――ということは今回の単独はハードルが低い……?
森下 そういうわけではないです! 一方で僕のハードルもあるし、結局練習したら2人して「あんまりやな」でボツにすることもあるんで。口頭でネタを合わすから、「ドアはこっちにあるだろ」とか「そんな恰好のつもりだった?」とか、イメージ図が全然違ったりして。やるまで分からないですね。
初瀬 それも怖いところなんですよ。最後まで油断できません……。ハードルがどうであれ、究極の28本をやりたいという思いでつくってます!
「オモロい」と思った1個の核さえ見せられれば満足
――ななまがりさんのネタって、いい意味で昔から変わらない印象があるんですよ。ネタにルールを設けたりしています?
森下 ルールというか、長いネタは向いてない気がしますね。こめているパワーが強いから、お客さんも胃もたれしちゃうし、僕らも血管切れちゃうんで。だから長くても7~8分。
初瀬 ネタの出来方はいろいろあるんですけど、たとえば設定をコンビニにして、そこからいろんなボケを考えるみたいなつくり方はしてないですね。「ムー」のネタはこいつが深夜3時に「ムー」と叫んでいたのがなんかオモロくて、そこから設定考えてできました。
森下 街中で奇声を発して暴れている人を観察してたら、急にSuica出して駅の改札を通っていって、「ちゃんと電車乗って家に帰るんだ……」と驚いたことがあったんですよ。そういう人間の一面がボケにならんかなーとか話したりもしますね。
初瀬 「オモロい」と思った1個の核を見せたくてつくることが多くて、それさえ見せられたら満足というか。どんな出来方でもできればいいんで、作り方にはこだわってないですね。
森下 あと、過去の“タイムカプセル”からできることもありますね。出た案を初瀬が全部メモしてるんで、時間経ってから掘り返してみたりするんですよ。ただ、1年前ぐらいのメモを見たら、「かたつむりばあちゃん」とだけ書いてあって、まったく記憶がないこともあります。
――2020年『R-1ぐらんぷり』決勝で森下さんが披露した「乳首隠せない男」も古いネタを再生させたと聞きました。
森下 あれは昔、個人であげてた動画だったんですよ。僕が『R-1』出ようとしたとき、初瀬に「乳首のネタ、オモロいからやれよ」と言われて。見てくれていたことに驚いたし、しかもオモロいと思っていたとは知らなかったんで、嬉しくてやってみたら決勝までいけました。
――ネタはあえて寝かせているんですか? それとも忘れてるんですか?
初瀬 忘れてはないです。オモロさに気づけてないときもあれば、面白いのに出力の方法があってないと思うときもあって……。「森下はこのやり方にこだわっているけど、違うやり方がいい。でも森下の機嫌も損ねたくない」で、塩梅見てることもありますね。
森下 僕も自分が言った案なんで、二押しできないところがあるんですよ。まず言ってる時点で「これ面白いでしょ?」と押しているから、「う~ん」という反応だったら、それ以上押すのは恥ずい。だからしばらくして頃合いを見て、舞台上の平場でそれに似たようなことで笑いが取れたら、その空気見ながらもう一押しすることあります。
――結構繊細ですね。
森下 今ならこの感じ受け入れるかな……と思ってたら、同じタイミングで初瀬から言ってくることもありますし。昔はそこのすれ違いでケンカしていた時期もあるんですけど。
初瀬 大人の2人になってきた。
森下 確かに。
初瀬 経験値や表現方法が増えてきて、いろんな空気を読めるようになりましたね。芸歴が如実に力になっている気はします。
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