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『家、ついて行ってイイですか?』けもフレ声優&“テトリスの神”の実家と亡き父からのギフト

歌手を目指す娘に父からの檄「覚悟がない。やれるだけやれ」

 深夜、千葉県の茂原駅で取材させてくれる人を探すスタッフ。茂原といえば、こりん星があった場所としておなじみ。そこに通りがかったのは、19歳の女性・まこさんだった。「原宿でライブのリハーサルをした帰り」だと言う彼女、現在は大学を休学中とのことだ。

「歌とかダンス、自分のやりたいことのほうがやりたくなってきちゃって」(まこさん)

 大学に入学し、即休学という流れ。よく、親は許してくれたものである。というわけで、まこさんの家に到着。お母さんはまこさんの電話で起き、お父さんは今寝ている模様。何しろ、もう12時半だ。

 なのに、『家つい』が来たからと父、兄、弟と家族を一気に叩き起こすまこさん。よく誰も怒らなかったと思う。どうやら、この家族はみんな仲良し。まこさんがみんなのことを大好きなのは伝わってきた。

 まこさんの部屋へ行くと、彼氏との写真が飾ってあった。高校時代は市立船橋に通っていたまこさん。彼氏は市船の野球部に所属、強豪校でベンチ入りを果たす努力の人だった。

 もちろん、彼女も彼女なりに努力している。部屋にはピアノがあり、日々、弾き語りの練習に励んでいるとのこと。まこさんはカメラの前で実際に弾き語りをしてくれた。出来は……微妙だった。正直、飛び抜けてうまいわけではない。

「音楽がないと、私はもう無理です」(まこさん)

 好きだけで成功できる世界ではないが、好きじゃないと頑張れないのも事実。現在は弾き語りの様子をiPhoneで撮り、Instagramにアップすることが唯一の発表場所のようだ。

 このタイミングでお母さんがスタッフを呼びに来た。さっき、まこさんに叩き起こされたお父さんがスタッフのために料理を作っているそうなのだ。さらに、近所の人が家に遊びに来て、酒盛りを始める始末。12時を越えているのに……。まこさんは音楽に合わせて踊りだすし、何なの、この陽キャ家族は!? こんな幸せ一家って本当に実在するのか。しかし、スタッフからの質問を契機にこの空気が一変した。

――家族の歴史で1番大変な時期っていつなんですか?
母  「今が1番大変。もちろん、子どもが小さいときに目を離せない時期の大変さはありましたけど、大きくなって入学金払ったのにいきなり休学とか」
まこ 「本当に結構怒られました。『ま~た迷惑かけるわぁ』と思いながら、でも自分の気持ちに嘘は付きたくないなっていう(笑)。フハハハ」

 この流れで、お父さんは説教モードに入ってしまった。決して、夢を追うなと言っているわけではない。

「口で言うほど腹づもりがないのは、俺はわかってるから。『ロス(音楽留学)行きたい』とか言ってたから、じゃあ、ロスに行っちゃえよって、片道切符で。そのくらいの腹づもりもねぇのに、『なんの答えが出るの?』って俺はいまだに思っている。たぶん答えが出ないまんま、主婦になるんじゃねぇのかなって。甘い世界じゃねえっていうのは、その世界にいない俺たちだってわかるよね」(お父さん)

 いいお父さんじゃないか。彼が伝えたいのは、「やるなら徹底的にやれ」というメッセージだ。覚悟があれば認める腹づもり。突き放したことを言っているが、娘を地獄に送りたくないだけなのだ。

父  「やりたいことやってほしいなっていうのは正直あって、(夢を)つかみとってほしい、正直」
母  「痛い目に遭っても、失敗しても、挫折しても、やらなかったっていう後悔のほうがしんどいかなと思ったから、やらせてみようって思っちゃったかな」
まこ 「なんか泣きそうなの。親がいろいろ考えてくれてたんだなって」
父  「今かよ」

番組スタッフのような部外者が来たからこそ、言えた本音があったのだろう。

「まあ……やれるだけやれや」(お父さん)

 このロケから3年半後、番組はまこさんに追加取材を行った。玄関でスタッフを出迎えたのはお母さんだった。

「(まこは)元気です。ちょっとびっくりするよ?」(お母さん)

 なんとなく予想はできていたが、まこさんは主婦になっていた。お子さんもすでに産んでいる。夫は市船の野球部だった彼で、2人は授かり婚だ。現在、まこさんは音楽活動は行っていないという。

「(取材の)後は1年間ライブ活動をしてたんですけど、周りの人がうまいし、スゴいんですよ。『ああ、敵わない』みたいな、ドンドン心がズタボロになって(苦笑)」(まこさん)

 大学は休学から中退となり、1年後に夢は挫折。そして結婚、出産した。これは、圧倒的な現実だ。でも、彼女にとって正解だったのかもしれない。自分の行くべき道がわかったろうし、家庭を持つのも幸せなこと。何が幸せかは人それぞれであり、幸せなら結果オーライである。

前回の取材で、お父さんは「答えが出ないまんま、主婦になるんじゃねぇのかな」と言っていた。父は娘のことがよくわかっていた。まこさんは見抜かれていた。

「(言ったことは)覚えてます。真っ裸でその世界に飛び込まないとそこで成功なんか絶対できねぇし、それを本人に言い聞かせるべきだったのか……って思うこともあるけど。今、でも孫の顔を見たら、これが1番幸せかもしれない」(お父さん)

 今回の『家つい』には考えさせられた。プロのゲーマーと声優を育てた家庭が紹介された直後、圧倒的な現実を見せる構成は心にキツいところもあった。でも、夢を目指して壁にぶち当たり、そこでたどり着いた新たな場所も生きてきた証である。違う自分を発見することも、素晴らしい足跡だと思う。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2022/03/16 18:30
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