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しずる村上純「お笑いの永遠のテーマは春木屋のラーメン」芸人半生記、“変化”と“不変”のマリアージュ

「変わらぬおいしさ」とは、変化し続けること

しずる村上純「お笑いの永遠のテーマは春木屋のラーメン」芸人半生記、変化と不変のマリアージュの画像6

――『裸々』を読んだ感想として、村上さんの半生を通じて「変化」と「不変」という2つのキーワードが浮かび上がってきました。村上さんと池田さん、まったく思考の違う2人がコンビを組んでいるからこそ、しずるは変わらずに「変化」を起こし続けられるコンビなのでしょうね。

村上:「変化」と「不変」、そうかもしれないですね。

 僕はラーメンが好きなんですけど、荻窪の春木屋さんっていうラーメン店は「変わらぬおいしさ」っていう言葉をキャッチコピーに掲げているんです。おいしさの基準って、ブームとか、時代ごとに変わっていくものなんですよね。だから「ここのラーメンはいつもおいしいね」と言われるためには、常に変化し続けなくてはいけない。それはお笑いも一緒だと思うんです。

 
 あとこの前、所ジョージさんにネタを見ていただいたときに「なんでそんなことするんだよ! っていうおかしさがあるから面白い」と言ってくださったんです。

「なんでだよ!」っていう違和感って、嫌悪感を抱くときもあれば、それをきっかけに興味を持つときもあるじゃないですか。僕自身は、常にその時代で“いい違和感”となるようなものを発信し続けることで、面白さを追求していきたい。これは、お笑いの永遠のテーマのような気もしています。

――その違和感って、周りの芸人さん方がしずるのお2人を「歪な関係性」と称しているところにも通じているような気がします。お互いに「不変」=譲れないものがあるからこそ衝突し、消耗しあい、一度は解散した経験もありつつコンビを続けている。それって、周りからすると思わず「なんで?」と違和感を覚えつつ、興味を惹かれる関係性というか。

しずる村上純「お笑いの永遠のテーマは春木屋のラーメン」芸人半生記、変化と不変のマリアージュの画像7

村上:うーん、そうかもしれません。やっぱり僕と池田は歪だからこそ一度解散しているわけだし。でも今思えば、早めの時期に解散したこともよかったのかもなと思います。

 もちろんお互いにケンカするつもりはないんですけど、歯車が噛み合わないところはあるわけで。でもその都度、相手の歯車に自分を合わせようとは思ってなかったですし、衝突し合うことでもなんとなく歯車が回るんならそれでいいんじゃないかってなってきたんでしょうね。噛み合わないままガチガチと回り続けるうちに、お互いに歯車の形がちょっとずつ変わっていって、なんかぬるっと動き出すようになったというか。池田にしても僕にしても、へそ曲がりなところはどうしても譲れないですから。

――では最後に、村上さんご自身が今後「変化」していきたいところ、そして「不変」でありたいところをお聞きしたいです。

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村上:人に「変わっている」とは言われ続ける存在でい続けたいと思ってます。逆に、「変化」というか、へそ曲がりでありながら1人でも多くのお客さんを笑わせられるように、自分の思う面白いことへの微調整は続けていきたいですね。……今思うのは、そんな実験をやっているうちに、自分がお笑いを始めた頃の感じに戻っていくような気がしていて。

――そういうものなんですか。

村上:その人の処女作って、粗削りだけど一番言いたいところが詰まっていて、僕はすごく好きなんですよ。例えば村上春樹さんだとデビュー作の『風の歌を聴け』(講談社)は、読んでいると言いたいことが脈々と伝わってくるような気がするんです。

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 あと、生まれたての赤ちゃんって、めちゃくちゃかわいいじゃないですか。もう存在するだけで100点満点。いい年の取り方をしたおじいちゃん、おばあちゃんも100点です。僕は41歳になったんですけど、これくらいの真ん中の年の人は、意地を張ったりして一番かわいくない(笑)。芸歴は今年で19年目になりますけど、キャリアも半ばに差しかかってるからこそ、自分の丸裸な部分を大切にしていきたいです。

(取材・文=菅原史稀/撮影=日高恭悟)

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『裸々(らら)』著者:村上 純

お互いネタを書くコンビだから
「しずる」はぶつかりあった。

発売日:2022年3月25日(金)
定価:1,870円(税込)
発行 ドワンゴ/発売 KADOKAWA

編集者、ライター。1990年生まれ。webメディア等で執筆。映画、ポップカルチャーを文化人類学的観点から考察する。

すがわらしき

最終更新:2022/03/26 13:00
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