ZAZYが辿り着いたフリップ最終形態「PCでも紙芝居」に培ってきた自信と誇りを感じた
#R-1ぐらんぷり
続いては2年連続決勝進出「寺田寛明」さん
国語の塾講師をして今も現役で教壇に立っているという異色の芸人。昨年決勝ステージで10組中10位だったことがずっと心に残っているらしく、今年の大会は「仕返し」だと。日本で10番目と考えれば凄い事なのだが、やはり1位を目指さなければといったところだろうか。
彼は文字へのこだわりが強く、ネタの前に流れるVTRでは「コントでやるよりも、わざわざ字で書いてめくって見せるのが面白いでしょ? っていうのが分かってもらいたい」と。これを聞いたとき、僕はあまり理解が出来なかった。
理由としてはコントで出来るネタとフリップに字を書いてやるネタは、種類が違うという認識をしているからだ。体で表現できるネタとフリップで表現するネタは明らかに限界値に差がある。体の方が限界値が低いのだ。文字や絵の方が体よりも伝わりやすく、想像力を使わずに笑うことが出来る。僕なりにこのこだわりを解釈してみたが、たぶん「同じフリップでも絵を使わずに字だけで想像させる方が面白いでしょ?」ってことなのではないだろうか。あくまでも憶測だが。
ネタは「始まりの歴史」というタイトルで、内容は「人が新しい事をはじめるとき、必ずしも周囲の人から理解を得られるものではない」というもの。少し堅い感じがするかもしれないが、そんなことはなく、まず最初に「○○をした人」次に「その人の意気込み」最後に「周りの反応」という3つに分かれていて、とてもわかりやすいシステムになっている。初めてお餅を作った人や初めて鉄棒を考えた人で興味を引き、お米をハンマーで叩いてひとつにしますという意気込みでボケて、そして周りの「良くないよ」「怖い」などでツッコミを入れる。
こういう大喜利タイプのフリップネタはどうしてもひとネタ毎にリセットがかかってしまい、なかなか爆笑を起こすのが難しい。寺田さんも例外ではなく、ひとつひとつのネタでは笑いが起きるのだが、その笑いが継続できずにリセットがかかってしまった。まだ見たことは無いが、字だけを使って笑いを継続させるネタは必ずあるはずだ。それを寺田さんに見せて欲しい。
最後は今大会唯一のコンビ芸人、金の国「渡部おにぎり」さん
最近よくバラエティ番組で目にする。渡部おにぎりさんはお笑いとして相当、器用だ。何故なら初めてコンビのネタを見たとき、彼はツッコミをしていた。そのあとコンビのネタでボケをしているのを見たとき僕は、違和感を感じた。何故なら彼をツッコミだと思い込んでいたからだ。つまり突っ込んでいるときにはボケの匂いは一切なく、ボケているときにはツッコミの匂いはいっさいない。
こんな芸人は稀である。
ボケの人間がツッコミをするときどうしてもボケの匂いが微かに漂ってしまう。例を出すとジャングルポケットの斎藤さんがツッコミをしているとき、どこかに面白さが滲み出てボケの匂いが漂ってしまうのはわかるだろうか。逆にジャングルポケットの太田さんは、ボケていてもどこかツッコミの匂いが漂う。持って生まれた性質がどうしても漏れてしまう、というわけだ。
しかしおにぎりさんは全く漏れない。まさにカメレオン芸人である。そんなおにぎりさんが今回はピン芸人。果たしてボケるのかつっこむのか。結果的にどちらでもなかった。
サンドイッチを食べようとしていたら、トンビに体ごと持っていかれる人というネタ。見た目と状況的にはボケ、ただしトンビに突っ込むというボケとツッコミの両方をやっていたのだ。率直に芸歴5年目でたいしたもんだと感心した。
しかし残念ながら、このネタでは優勝は出来ないと感じた。それはまず出オチ感だ。頭の上に鳥のはく製が乗っており、まるで空中に引っ張られているかのような姿。この恰好はあくまでも説明なのだが、どうしてもボケに見えてしまう。つまりこれで笑える人と笑えない人に分かれて、ここで笑えない人はその後のネタも笑えない状態になってしまうのだ。
そしてもうひとつは声だ。彼は大きな声を出すときに普段出している声と全く違う声になる。本人はどういうつもりで出しているかはわからないが、はたから見ると笑わそうとしているように見える。その声で普通の事を言うと面白くないことに見えてしまうのだ。普通の声で声量を上げられるようになれば狙ったところであの声が使える。演技のレベルを上げるにはぜひ身に着けてほしいテクニックだ。あとは純粋に後半のネタが弱かった気がした。
今回のR-1グランプリは決してグダグダなどしていなかった。
大げさかもしれないがエントリーした3199人ひとりひとりが1年間命がけでネタをつくり、そこから勝ち上がった8人が今できる最高の戦いをしたのではないだろうか。
正直なところ視聴率は毎年低くなる一方だが、それはお笑い界全体への興味が低くなっているのかもしれない。
お家時間が減りつつある今こそ、芸人はもちろんだが、お笑いに関係する全ての人たちが力を合わせてお笑い界を盛り上げなければいけない。
興味がある人だけが見るお笑いではなく、誰もが興味を持つお笑いになるように。
こんな時代だからこそ「笑う門には福来る」さ。
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