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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > ZAZYが辿り着いたフリップ最終形態
元芸人がR-1 2022 分析!

ZAZYが辿り着いたフリップ最終形態「PCでも紙芝居」に培ってきた自信と誇りを感じた

続いては今大会で見事優勝に輝いた「お見送り芸人しんいち」さん

 8組中唯一の歌ネタ。ギターを使って悪意のある歌詞で笑いを起こす、何ともわかりやすくそれでいて笑いやすいネタである。僕の世代でいうと”歌う長井秀和”といったところだろうか。

 僕は元々彼のネタが好きで良く動画を見ていたので、ひいき目にならないよう気を付けていた。ラストイヤーということもあってか、ネタの冒頭ものすごい緊張感に包まれていた。ただ歌ネタというのは普通のネタよりも派手なのでお客さんが盛り上がりやすい。そのお陰でしんいちさんが歌いだすとすぐにお客さんはその世界観に引き込まれ、しんいちさんの緊張もほぐれたかのように見えた。

 何度もいうが彼は今年がラストイヤー。絶対に決勝にいくという思いが強く出てしまい、ネタの序盤からテンションを上げて大声で歌い始めたのだ。

 こういう歌ネタは派手さがあるので、最初からテンションを上げて大声を出すと後半盛り上がりに欠けてしまう。同じピン芸人でギターを使う「AMEMIYA」さんの冷やし中華始めましたというネタを思い出してほしい。ローテンションからネタをスタートし、錆の「冷やし中華始めましたぁ」では大声を出すのだが、ネタの序盤は大声なだけでテンションまでは上げていない。サビを繰り返していくにつれテンションも上がっていき、ラストでマックスになるというのがセオリー。

 これは歌ネタだけではなく、漫才もコントも一緒である。しんいちさんもただ大声だったのではないか? と思う人もいるかもしれないが、明らかに早口で口が回らず聞き取りづらくなっていた。これは体が温まっていないのにテンションを上げてしまった証拠だ。優勝できたので本人も満足していると思うが、できればパーフェクトなネタを見てみたいと思ったのが正直なところだ。

 ファイナルステージは緊張もなくネタが出来ていたのだが、曲調と言い回しが違うだけの同じようなネタだったので、また違った一面を見てみたかった。とにかくおめでとうございます。

続いては復活ステージを見事勝ち進んできた「Yes!アキト」さん

 視聴者が披露されたネタ動画を見て、全23組の中から決勝進出にふさわしいと思う1人に投票し、1番多く票を獲得した芸人が決勝に進出するというシステムで行われた復活ステージ。

 総得票数59,843票のうち18,170票を獲得し決勝に進出したYes!アキトさん。それだけでも凄い事なのだが、彼はなんとギャガーなのだ。ギャガーとは一発ギャグをメインとしたショートネタをひたすらやる芸人を指す言葉。バイクに乗る人は「バイカー」ハイキングをする人「ハイカー」ギャグをするひと「ギャガー」というわけだ。

 一般的な芸人は3分間で1本しかネタをやらないが、彼らギャガーは複数本のネタをこなす。数えてみたのだが、Yes!アキトさんは決勝戦で何と17本もギャグをしていた。一般的な芸人からみたら恐ろしい数だ。だがギャガーだとしたらちょっと少なかったかもしれない。今回Yes!アキトさんが優勝できなかった理由のひとつがそれだ。ギャグはどれも面白いものだったが、それを一定のリズムでやられてしまうと、いつしかそのリズムに慣れてしまい後半は笑いづらくなってしまう。なので序盤はゆったりしたペースでギャグをやって、どんどんその速度を上げていき、最終的にギャグを畳みかけることが出来たならもっと高得点を叩き出していたに違いない。

 ギャガーの強みは、ネタがいちいちリセットされるところだ。

 ひとつのギャグで笑いが起こらなかったとしても、次のギャグで笑いを起こせばいい。笑おうが笑うまいがとにかくギャグを連発することが大事なのだ。変に落ち着き過ぎてしまったのが敗因だったのかもしれない。

 そしてもうひとつ。これはYes!アキトさんの根底を揺るがしてしまうかもしれないが、ギャグの合間に入れるブリッジの「Yes」がネタの邪魔をしていたように思えた。せっかくギャグで笑いが起きていたとしても、ゆったりささやくようなYesが笑いを静めてしまう。たぶんゆったりやることで次のネタを思い出しているのかもしれないが、とても勿体ない気がした。せっかくならそのブリッジの部分でもギャグ並みの笑いが起こるようなものを考えるか、テンションを下げないブリッジがあればまた違ったのかもしれない。

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