『ザ・バットマン』名探偵ヒーローを描くサスペンスアクションの傑作
#ザ・バットマン
「これから」成長するヒーローとしての魅力
マット・リーヴス監督には、バットマンのルーツである探偵に立ち返るだけでなく、同時にバットマンを野心的な青年として、しかも「自分がやらなくてはならないと感じることを成し遂げるためなら、どんなことにも耐えるという、現実的なスーパーパワーをもつ人物」として表現することを心掛けたという。
今回のバットマンは、悪を成敗する活動を始めたばかりの2年目であり、ギラギラした野心を持ってはいるが、失敗も多い「青二才」のような印象もある。その一方で確かな信念や忍耐力を持っていることも種々の描写から伝わってくるため、「これから」成長するヒーローとして心から応援できるようになっていた。
ちなみにバットマンは大富豪でもあり、過去の映画『ジャスティス・リーグ』(17)では自身のスーパーパワーは何かと訊かれて、「スーパーリッチ」と答える場面がある。その通り、彼は数々のハイテクガジェットやバットモービルという専用の乗り物を持つなど、超お金持ちであることを自分の力としている。それもまた超能力とは違う現実的なスーパーパワーというわけなのだが、今回は前述した信念や忍耐力という、やはりバットマンらしい現実的な力を持つヒーロー像を描こうとしたというわけだ。
さらに、今回のバットマンは両親が殺害された過去、その拭い去り難いトラウマとも向き合うことになる。リドラーもまた、ただ狂気的なだけでない内面も伺わせる。仲間となるキャットウーマンもまた「これから」成長していく未熟な面が垣間見え、どこか似たところもあるバットマンとの掛け合いが魅力的に映る。それらのキャラクターの関係性およびドラマも、重層的かつ奥深いものに仕上がっていた。彼らが辿る結末も、多くの方が納得できるだろう。
それらの魅力的なキャラクターを演じる俳優陣も、文句のつけようがないほどにハマっている。『TENET テネット』(20)などのロバート・パティンソンは始終鬱鬱としているようで、「どうしても放っておけない」魅力もある今回のバットマンにピッタリ。観客を極限までにイライラさせる役柄に定評があるポール・ダノも、今回も良い意味ではらわたが煮え返るような醜悪さを滲ませるリドラーにこれ以上なくハマっている。特殊メイクで「誰?」と思うほどに変貌した、悪役のペンギンに扮したコリン・ファレルにも注目だ。
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