『ザ・バットマン』名探偵ヒーローを描くサスペンスアクションの傑作
#ザ・バットマン
3月11日より、映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』が公開されている。
結論から申し上げれば、本作は『ダークナイト』(08)に匹敵する、ダークテイストのヒーロー映画の中で指折りの傑作だった。しかも、これまでのバットマンの関連作品はもちろん、アメコミ原作映画を1本も観たこともないという方でも楽しめる、間口の広さを備えている。
176分という3時間近い上映時間にたじろいでしまう方もいるかもしれないが、実際に観れば、その長さにも納得。バットマンを翻弄する敵に立ち向かう重圧なドラマ、画や音楽が「バキバキにキマっている」からこその作品内世界への没入感、それらが最高クラスのエンターテインメントとして昇華されているので、「3時間なんてあっという間、何ならもっと観たい」とさえ思わせてくれた。
なお、公式に注意喚起がされている通り、劇中には津波を連想させる水害のシーンがあるので、そこだけは了承した上でご覧になってほしい。
また、上映時間が長いだけでなく、集中力を要する会話劇も多いため、体調を良くして、トイレも直前に済ませ、万全の態勢で観てほしいと願う。映画館で観てこそのかけがえのない「体験」がそこにはあるし、ドルビーシネマやIMAXなどの上映形態ではさらに臨場感を持って楽しめるだろう。事前に知っておく情報はこれで十分だが、その他の魅力も記していこう。
名探偵VS最狂の知能犯
あらすじを簡単に記そう。青年ブルース・ウェインが悪と敵対する存在であるバットマンになって2年が過ぎた頃、権力者を標的とした連続殺人事件が発生する。リドラーと名乗る犯人は、現場に必ず「なぞなぞ」を残していたのだが……?
本作の何よりの特徴、それはヒーロー映画であると同時に「探偵もの」であり「サスペンスアクション」であることだ。バットマンは残されたなぞなぞからリドラーの目的や次に起こり得る殺人を推理するものの、それを凌駕する事態に翻弄されたりもする頭脳戦が繰り広げられる。
端的に言って「名探偵VS最狂の知能犯」という、ワクワクする対戦カードが打ち出された内容なのだ。もちろん、スピーディーな格闘シーンや、ド派手なカーアクションも展開するため、莫大な製作費と最高峰のスタッフが揃ってこその大作ヒーロー映画の醍醐味も存分に味わえるだろう。
また、黒を基調とした重々しい画や、おどろおどろしい雰囲気から、映画『セブン』(95)を思い出す方も多いのではないか。実はマット・リーヴス監督は、悪役のリドラーについてのアイデアを創出するため、サンフランシスコで1968年から1974年に起きた「ゾディアック事件」も参考にしたそうだ。そのため、『セブン』と同じくデヴィッド・フィンチャー監督の、その事件を描いた『ゾディアック』(07)も強く連想させる内容にもなっている。
加えて、本作は現代が舞台であり、スマートフォンやSNSも登場する。現実のSNSと同じく「あっという間に悪意が拡散されてしまう」様は、もはやホラー映画のようでもあった。
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