『家つい』さまぁ~ずの先輩だった元芸人の現在。もう夢は追えないが、夢ある子を応援したい
#家、ついて行ってイイですか? #児嶋一哉
ウッチャンナンチャンのコントに実力差を感じ、芸人をやめた男
埼玉県桶川市のスーパーでスタッフが声をかけたのは、61歳の男性。なんと、自宅の大宮から桶川まで買い物に来たそうだ。
「面白い物あるかなあ? って来たんですけど」
それ以前に、彼に面白そうな雰囲気がある。番組は男性の家へついて行くことにした。
というわけで、ご自宅に到着。マンションの2階に住んでいるとのことだが、少し変なのだ。外から見ると建物全体がピンク色だ。妙に派手だし、ラブホテルの居抜きじゃないのか? よく見ると、この男性もちょっと火野正平に似ているし……。
部屋に入り、スタッフが最初に気付いたのは家の中の様子ではなく、軽装になった彼の腕のたくましさだった。2~3年前までブラジリアン柔術を習っていたという。当然、彼はその技術を披露してくれた。スタッフ相手に三角締めを掛けたのだ。家について行き、すぐにおじさんの太ももに挟まれて三角締めを食らうスタッフ。災難である。でも、決して熱烈な“格闘技大好きおじさん”ではない。
「僕の生活はほとんどお店なんだよね」
マンション1階にあったのは、カラオケパブ「OSKER(オスカー)」なる店舗だった。彼が営むお店だ。というか、この建物全体の大家が彼らしい。
「親が作って僕が引き継いだっていうね。最近塗り替えたんですよ、外壁を」
――なんでピンクにしたんですか?
「なんとなく、目立つと思ったからね」
人生イージーモードとまでは言わないが、かなり恵まれた環境であることに間違いはない。しかも、店の中に入るとすごく広いのだ。お洒落だし、高級感があるし、ドラムまで置いてある。
「お客さんがバンドやったり、カラオケ歌ったり、そういう店ですよね。あと、しゃべってあげたり。いろいろ、恋愛相談に乗ってあげたりね」
――僕、何回か女の子とデートすると、その子が段々スーって引いていくんですよ。
「それはね、魅力がないから。やっぱり魅力がありゃ、女性は来るから。カッコいい奴に勝つためにどうしたらいいかって言うと、芸だよね」
事実、この人は芸達者だった。ピアノは弾けるし、ドラムも叩ける。だから、モテる。店内を見渡すと、彼が女性と写る写真が貼ってあった。
「これは僕です。高校生の頃」
――隣は奥さんですか?
「これは新島でナンパした女の子ですね」
過去のナンパ記録を自分のカラオケパブに貼る破天荒さだ。スゴい店である。そして、その横にはイジリー岡田の写真が貼ってあった。たまたま飲みに来たときに撮ったのだろうか? いや、彼とイジリーは友だちらしい。
「仲いいです。今でも連絡取り合ってる。僕ね、もともとお笑いやってたんですよ。三村、大竹とか後輩で……」
――え?
「あの、さまぁ~ず」
急に緊張し始めるスタッフ。「変なこと言えなくなっちゃった」と、VTRを見る児島も姿勢を正した。イジリーとはホリプロで同期で、当時まだバカルディだった三村マサカズ、大竹一樹の先輩筋にあたる人らしい。かつて、「マンハッタン爆発小僧」なるコンビ名でコントをし、ウッチャンナンチャンと同時期にラ・ママ新人コント大会へ出場したキャリアの持ち主である。同じホリプロに所属する山瀬まみと撮った写真も残っているようだ。そんな写真がありながら、なぜ新島のナンパ写真を店に貼っているのか? 面白い人だ。
実は彼、芸人の活動は4~5年で辞めたそう。その理由は何なのか?
「まあ、自分で自分のことを悟ったんだよね。面白い人の中で面白い人になるのは、やっぱり相当だと実感した。ラ・ママに出たときはトリをウッチャンナンチャンがやって。『うわぁ、奴ら面白いじゃん……』って思ってね。実力の差だよね」
――ショックでした?
「いや、ショックじゃない。あれはもう、やり切ったかな。30歳からはお店で」
――そういうとき、スターになりたかった気持ちは消えるものなんですか?
「消えてはいないよね。ほら、店の中でスターでいればいいわけだし。そこでどういう話術するか、会話するか。いろんな経験してきたけど、店の中で生かされているかもしれないね。今はお店があるから、楽しんでるのかもしれない」
結果的に、すごくいい方向転換だった気がする。自らを知り、その中で充実した人生を送る。今の彼はお店こそがステージだ。さらにもう1つ、男性には営んでいるお店がある。カラオケパブに併設してあるのは、無料の貸しスタジオだ。
「お金ないじゃんみんな、芸人さんは。だから、『いいよ、ドンドン練習すれば』って貸して。夢を追うのは僕はもうできないけど。で、うまくなったら店でもできるじゃん。お笑いでもステージでやればって。夢持ってる子は応援してあげたいし、人前でやらしてあげたいじゃん。夢がある人を見るとうらやましいと思うもんね」
このご時世、若者の夢を応援する中年の存在は貴重だ。実はあんまりいない。「どんな面白キャラなのだろう?」と思っていたら、そんなタイプではなく尊敬に値する人だった。世の中、いろんな人がいて面白い。
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