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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 米コメディアンが見たロシアのウクライナ侵攻
スタンダップコメディを通して見えてくるアメリカの社会#25

コメディアンたちがプーチンいじり倒し!ロシアのウクライナ侵攻でトランプもネタにされる

ロシアのウクライナ侵攻、コメディアンはどう見た? 米で高まるの画像1
ケイト・マッキノンのモノマネをするコメディアン・メリッサ・ヴィルアセノーラ(写真/Getty Imagesより)

 2月24日、ロシアがウクライナに侵攻を開始して以来、戦闘状態が続いている。当然アメリカでも連日大きく報じられ、ニュース番組はもちろんのこと、お茶の間に笑いを届けるコメディ番組でさえも例外なく、ほぼすべての番組で司会者であるコメディアンたちがこの話題に触れた。

 平日の夜、月曜日から金曜まで生放送されるトークショーでは、司会のコメディアンがその日に起こったニュースをジョークにして届けるのが通例だが、基本的にはどの番組にもライターチームがいる。彼らは当日の16時ごろまでに起こった出来事をネタにまとめ、それらを司会者とすり合わせながら、最終的にどのジョークを実際に番組で話すかを決定している。

 まずは2月26日、土曜日。

 NBCで放送されている長寿コント番組『サタデー・ナイト・ライブ』から見ていこう。当番組では1975年の放送開始以来、毎回その週の時事ネタを描いたコント「コールド・オープン」が名物となっており、先週も多くの視聴者が注目した。そして放送開始直後、画面の中には、ニューヨークを拠点に活動するウクライナ人コーラスグループによるスタジオでの合唱が映し出された。笑いどころを設けない、実に粛々とした、まさに「祈り」の合唱だった。

 ちなみに『サタデー・ナイト・ライブ』でそうしたシリアスな「コールド・オープン」が放送されたのは、2016年11月12日、ドナルド・トランプが大統領選に勝利した直後の回が記憶に新しい。出演コメディアンでもあり、ヒラリー・クリントンのモノマネで知られるケイト・マッキノンが、レーナード・コーエンの楽曲『ハレルヤ』をピアノで叙情的に弾き語ったのだ。リベラルで知られるこの番組にとっての「悲劇」の中で、視聴者を励まし、微かな希望を見出そうとする演出だった。

 それ以来の「悲劇」として描かれたウクライナ侵攻。お決まりのオープニングコールはあの日と同じ、ケイト・マッキノンが、シンプルな黒のスーツで行った。そして彼女の前に設置されたテーブルにはキャンドルで「キエフ」の文字がこしらえてあった。

 週が明けた2月28日、月曜日。

 トレヴァー・ノアが司会を務めるコメディ・セントラル放送のニュース風刺番組『ザ・デイリー・ショー』では、放送時間を丸々ウクライナのニュースに費やした。

 実際のニュース映像を用い、ロシアに対する世界中からの経済制裁を紹介、「永世中立国」であるスイスからも資産を凍結されたプーチンを茶化して見せた。その上で、国内の混乱でATMに長蛇の列を作るロシアの現状を踏まえ、

「プーチンさんよ、ついにあんたが目指していた“ソヴィエト復活”が達成できたじゃないか! みんながパンに並んでたあの時代にやっと戻れたみたいだよ」

と手痛いパンチ。

 そして、ロシア軍に抵抗するウクライナ市民やゼレンスキー大統領を「なんて勇敢なんだ」と褒め称えた。元コメディアンとしても知られるゼレンスキー。社会科の教師がひょんなことから大統領になるドラマ『国民のしもべ』で国内の人気を不動のものにし、現実世界でも大統領になってしまった。

 ニュースにおいても、彼の

「私はウクライナに残って最後まで戦う」

というコメントや、アメリカから国外脱出を持ちかけられた際に言った

「いるのは弾薬だ。飛行機じゃない」

というセリフが引用され、「ヒーロー」として報じられることが多い。

 同日に放送されたCBSのトーク番組『レイトショー』でも司会のスティーブン・コルベアはゼレンスキーを手放しに絶賛してみせた。ワシントンポストの記事を参照しながら

「いいか、プーチン、よく聞け! ウクライナ市民もゼレンスキーも諦めないって言ってるんだ! ゼレンスキーは勇敢で、国民からも愛されていて、そして上半身裸でも美しいんだよ!」

 何かと上裸姿をカメラの前で披露してきたプーチンへの皮肉とともに、ゼレンスキーを讃えるこのジョークに会場中が大きな拍手を送った。

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