『激レアさん』SMA芸人たちのジャイアントキリングと“芸人の墓場”の17年史
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SMA芸人が裸で「R-1ぐらんぷり」を2連覇!
ついに所属芸人が賞レースを制し、波に乗るSMA。しかし、平井さんにはどうしても結果を残してほしい芸人がいた。この事務所の精神的支柱、ザコシショウである。
当時のザコシは、大仏がただ高いところから落ちるネタなど、今以上に奇抜なことを繰り返していた。彼が『R-1ぐらんぷり2016』(フジテレビ系)を制したのは、おなじみ「誇張しすぎたモノマネ」だ。当時をザコシ本人が振り返った。
「ここだけの話ですよ? 『R-1ぐらんぷり2016』を獲って売れたんですよ、僕ね。2014年の後半ぐらいかな。平井さんに『お前さあ、こんなモノマネなんかさ、いつまでやんだよこんなこと』って。『いやあ、でも、もう1年だけやらしてください』って。で、獲ってやりましたわ(笑)」(ザコシショウ)
完全に判断を誤っていた平井さん。しかし、それはザコシへの期待の表れだった。
「リーダーが結果を出さないとよくないじゃないですか。鼓舞する叱咤ですよね」(平井さん)
この勢いそのままに、翌年の『R-1ぐらんぷり2017』を制したのはアキラ100%である。SMA芸人が裸で2連覇を果たしたのだ。当然、アキラへの思い入れも強い。
「このネタってやっぱり賛否があるネタなんで、『本人が心折れないかなあ?』って思ってて。僕は大爆笑していて、本人が『やらないです』って言うのが怖かったんで、早めに結果出してほしいなあと思う気持ちはありました」(平井さん)
それにしてもつくづく思うのは、裸とハゲの占有率の異常な高さだ。お笑い界の常勝軍団である。
あぶれ者たちが“チーム戦”で錦鯉をM-1に送り込む
錦鯉の『M-1グランプリ2021』(テレビ朝日系)優勝は、記憶に新しい。ブレイクしかけで多忙なために、ネタを仕上げ切れていなかった2人。そこで、平井さんはM-1決勝3日前に錦鯉を呼び出した。そこいたのは、小峠をはじめとする賞レースの王者やファイナリスト常連たちであった。このメンバーの前でM-1決勝予行演習をさせた平井さん。ネタ見せが終わると、彼らは錦鯉に数々のアドバイスを授けた。特に、小峠が「最後に何か一言あったほうがいいんじゃない? 『Life is beautiful』とかさ」と助言したのは有名な話だ。
つまり、SMAは事務所総出のチーム戦でM-1に臨んでいた。個人商店の集まりの吉本興業では考えにくいチームプレイである。本流からあぶれた者たちがスクラムを組んで天下を取りにいく姿の、なんという痛快さか。
「ネタを言い合うとかもそうなんですけど、全部ひっくるめて、やっぱみんな優しいんですよね、傷ついた人だから。で、年齢もある程度いって。だから、嫌な人とかいないんですよね。『性格悪いな、あいつ』とか。ネタについて先輩後輩関係なく言えたりとか……っていう部分は、SMAのいいところかなあと思いますね」(錦鯉・長谷川)
「M-1グランプリ」「キングオブコント」「R-1ぐらんぷり」の三冠を獲った事務所は、吉本とSMAだけである。17年かけたジャイアントキリングなのだ。残るは「女芸人No.1決定戦 THE W」のみだが、SMAにはやすことあっぱれ婦人会という人材がいる。
当事者の証言を交えながら、“芸人の墓場”が三冠達成するまでの歴史を総ざらいした「激レアさんSMA史編」。芸人の掃き溜めが常勝軍団に姿を変える過程は、まるで『プロジェクトX』を見ているようだった。
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