毎日と朝日は“ラップ動画”の前に「現役世代の社会人」からカネを取れる新聞記事を出せ!
#朝日新聞 #毎日新聞
「ネットニュースをタダで見る層」を相手にしても意味がない
――もし新聞が本当に現役世代の社会人のみ、それも収入がそれなりに高い人だけに対象を絞り込むと、紙面の表現もかなり変わりそうですね。
まともな社会人ならツイッターくらい知ってますから「米短文投稿サイトのツイッター」なんて余計な注釈はなくなります。「改ざん」も「改竄」でいいし、「デジタル・トランスフォーメーション」も単に「DX」になる。分からなければ手元のスマホでググればいい。そういうスタンスになるんじゃないですか。
――毎日や朝日の“ラップ動画”に戻ると、これが「現役世代の社会人」の購入につながるものなのか、ということになるわけですよね。
広告代理店はすぐ「若者世代をターゲットにしましょう」といいますよね。大手ネットメディアのバズフィードやハフポスト、ビジネスインサイダーなどはどこも「ミレニアム世代」「Z世代」のためのメディアをうたっています。
でもそれは、彼らが親世代のおかげでかなり豊かではあるけれども、自分でニュースにお金を支払う年代になっておらず「ネットニュースをタダで見る層」として想定されているからです。彼らを紙の新聞がターゲットにしても、まだなんにも出てきませんよ。
たぶん意図としては「新聞の部数が減り続けている」→「将来の読者になりうる次世代にアピールしなければ未来はない」→「ラップだ、TikTokだ」という程度のロジックだと思うんです。確かに、若者にリーチするにはツイッターではダメです。
でも、いまTikTokを見ている若者は毎日新聞に課金しませんし、課金するとしてもそれは社会人になってからの話です。じゃあ彼らが社会人になったとき、何に課金するのか。“ラップ動画”じゃないですよね。新聞はTikTokに逃げている場合じゃない。
例えば、いまは高齢読者におもねって突っ込んで書けない「社会保障」の問題を、社会部的な弱者寄り添い型ではなく、負担が重くなる若者の視点で、社会のしくみとその歴史から説いていく。そんな連載を1年間続けて書籍にする。その程度の取り組みはやるべきでしょうし、そういう企画のスピンアウトとしてTikTokをやるなら意味が変わってきます。
「並みの社会人」以上に求められる記者の見識
――国民全体のための媒体から、現役世代の社会人をターゲットに変えようとすると、記者やデスクのレベルも問われますね。
記事の専門性を高めなければ、カネ払うほどでもないと思われてしまいます。記者の見識や教養も、並みの社会人以上に高めなければならない。それだけの高収入は、すでにもらってる。でも、業界ではそういう問題意識はない。
――ただ、毎日新聞の動画部門の取り組みはいつも先進的で、公平に見て“ラップ動画”以外にも興味深いコンテンツはあると思いますよ。
私も「マルチ商法の全国会議」の動画を見ましたが、なかなか衝撃的でした。スマホで見やすいフォーマットになっているので、YouTubeよりも多くの情報をどんどん閲覧させることができるかもしれません。
ただ“ラップ動画”の内容が「理不尽な校則」だったのは、反権力ジャーナリズムが受け入れられる下地を整えようとしてるのかな、みたいなところが毎日新聞っぽいかなと。この部分は、博報堂がクライアントに忖度したのかもしれませんけど(笑)。
朝日新聞のラップも、Moment Joon氏は文句なしにカッコイイんですが、なんというか朝日側が「社会批判ってカッコイイ!」と思わせようとしてる雰囲気がありますよね。苦しんでいる自国民がいくらでもいるのに、韓国ネタを最初にもってくるところも徹底して朝日らしい。
繰り返しますが、これで将来の読者潜在層を開拓し新聞の復活につなげようとしているのであれば、的を射ているとは思えない。やはり現役世代の社会人、それも価値あるニュースにお金を払う高収入層に向き合うことから逃げるべきではないでしょう。
ただ、もう紙の新聞にはある程度の見切りをつけていて、将来の情報提供のあり方をがむしゃらに模索しているのであれば、外野がとやかく論評しても意味ないですよね。頭だけで考えていてもヒットは生まれないのは確かですし、とにかく手を動かしていろいろやってみよう、という点には率直に敬意を表したいと思います。
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