毎日と朝日は“ラップ動画”の前に「現役世代の社会人」からカネを取れる新聞記事を出せ!
#朝日新聞 #毎日新聞
創刊150周年を迎えた毎日新聞は2月21日、動画SNSのTikTokに“ラップ動画”を投稿した。博報堂の研究機関が開発した「AIラッパーシステム」を活用し、新聞記事を素材に音楽や文字の動きを生み出すのだという。朝日新聞も3月3日にHip Hopアーティストとのコラボを開始している。
いかにも若者世代に迎合した取り組みだが、果たして部数が減り続ける新聞復活の起爆剤となりうるのか。元広告代理店勤務で、現在はネットサービス会社でマーケティングディレクターを務める40代男性に、企画の問題と可能性について聞いた。
惰性で購読している高齢者は減っていく
――毎日新聞が「Z世代プロジェクト」として“ラップ動画”をTikTokにアップしました。朝日新聞も歩調をあわせるように、韓国出身の「移民ラッパー」Moment Joon氏の動画をYouTubeにアップしています。ご覧になってどうお感じになりましたか。
評価の前に、毎日新聞と朝日新聞がこれをどういう意図で作ったのかについて考える必要がありますが、さらにその前に、そもそも毎日、朝日のみならず日本の新聞業界の何が課題なのか、から整理した方が分かりやすいのかなと思います。
――なるほど、ではお願いします。
私がやっているマーケティングの世界では「このサービスは誰のどの財布を狙うのか?」を最初に問いかけます。ターゲットは学生なのか社会人なのか、男性なのか女性なのか。家庭の生活費なのか、個人のおこづかいなのか。
財布は夫だけど、購入の決定権が妻にある場合、妻に向けたプロモーションが必要です。さらに重要なのは支払余力で、それがなければどんな戦略も成り立ちません。
この観点からいうと、新聞社は30代後半から50代の「現役世代の社会人」をコア対象にお金を出してもらわなければ、ビジネスを維持できないことになります。なぜなら、それ以外にニュースにお金を支払う層はないからです。
確かに現時点では、昔の習慣が抜けない“惰性組”の購読がかなり多いです。しかし彼らが今後急速に減少していくのは確実であり、新聞社はここをコアのターゲットにしてはいけないのです。
「読めば得をする」日経にならカネを払う
――いまの新聞の中身が、現役世代の社会人がお金を払いたくなるものになっているのか、ということですか。
紙かデジタルか以前に、コンテンツの中身が最初で最大の問題になります。結論から言えば、現在の新聞の中身は現役世代の社会人が満足するものにはまったくなっていないと言っていいでしょう。特に全国紙は。
ある全国紙記者がツイッターに「中学生にも分かるように書けと先輩に教えられた」と投稿していましたが、お金を出さない中学生なんてターゲットになりえないんですよ。だから全国紙は、大人にはレベルが低く物足りなく感じるのです。
――その点でいえば、日本経済新聞は電子版が他紙よりもかなり健闘しています。
当然です。日経新聞を読めば、現役世代の社会人がビジネスや投資で得をするチャンスが得られるのですから。一方で、毎日新聞や朝日新聞は、読んでも何の得にもならない。それでお金を出してもらえるはずがないんです。
――でも全国紙って、昔からそんなものだったじゃないですか。国民が広く知っておくべきとされる情報を、ある程度は誰にでも読めるように書いておくと。
その役割は、すでにかなり前からテレビに移っています。政府会見や災害情報などを含め、日本国民の大多数向けに報道するものはNHKがあれば済んでいる。速報性も情報量もテレビが勝っています。そこに即時性、双方向性のネットが加わっている。
――新聞に話を戻すと、現役世代の社会人が満足するレベルの情報とは、どういうものになりうるのでしょうか。
ひとつは、日経新聞のような「お金になる情報」です。もうひとつは、国内政治でも国際情勢でも「確かな予測につながる情報」であれば、自分がとるべき行動の判断材料になるわけですから、お金を出してもらえます。イデオロギーに基づく「予断」や「ポジショントーク」では全く役に立たないばかりか、合理的判断には有害です。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事