岸田内閣、中露の脅威や新型コロナで支持率最低…人気取り法案「経済安全保障」延命なるか
#自民党 #岸田文雄
中国への脅威を念頭に置いた同法案
岸田首相の開成高校の後輩でもある小林鷹之・経済安全保障担当大臣は21年12月22日、日本記者クラブで「米国や中国など他国の動きに右往左往しないようにするため」と同法案の背景を述べたが、本音は米国や他国の動きなど眼中になく、注視すべきは中国のみと考えられる。
政府関係者の一人は政府による基幹インフラの事前審査について「表立って言えないが、政府としては、企業の基幹システムがサイバー攻撃を得意とする中国やロシアの攻撃を受け重要な情報が盗み取られ、日々の生活に必要なサービスを停止させられることを最も警戒している。特に中国はそうした機能を持つマルウェアを日系企業が気づかないうちに潜り込ませることに長けている」と背景を説明する。また、別の政府関係者は「基幹インフラでは、サイバー攻撃を受ける懸念のある外国製品が重要設備に使われていないかなどを国が事前審査するというが、実際に検査を実施するとなると専門知識が必要となる」と検査体制の構築に今から懸念を示す。
官民の技術協力による先端技術開発はAIなどの先端的な重要技術を育成・支援するための基金を設け資金援助する。特許出願の非公開化は、原子力や武器開発などを念頭に置く。政府が、保全が必要と判断すれば、出願技術を直ちに非公開とする。
同法案作りで主導的役割を果たしてきた自民党の甘利明前幹事長は毎回、サプライチェーン確保の重要性を説く時に、最初に新型コロナウイルスが感染拡大した時に日本中で起きたマスク不足を例に挙げる。
「あの時、初めて私たちは自分たちが使っているマスクが中国から来ていることを知った。中国はミサイルを使わなくてもマスクなど医療品の供給を止めるだけで日本を崩壊させることができる」
媚中派の二階俊博氏が幹事長に居座り続けていたら、同法案の提出など叶わなかったわけで、短期間でも甘利氏が幹事長でいたから、この法案は今国会で成立される運びとなった。
法案に内閣の命運を掛ける岸田首相 肝にある日米同盟の強化
岸田首相は21年10月に内閣を発足させ同月に行われた総選挙も勝利した。
しかし、看板政策の一つに挙げた「新しい資本主義」は「成長と分配の好循環」という響きの良いキャッチフレーズとは裏腹に「意味不明」、「何をやりたいのか分からない」との声が上がるなど、国民及び市場の受けが良くない。また、自らの長所を「聞く力」とするが、聞くだけで実効性を伴わなければ国民は付いてこない。1月から急激に拡大した新型コロナウイルス株オミクロンも政権にとり逆風だ。
古今東西の指導者は人気が急落した時、外に敵を求め国民の人気を得ようと画策する。「日本のサプライチェーンの脆弱性が国民の生命や日常の生活を脅かすリスクを招くと危機感を煽り、それを阻止するために『経済安全保障推進法案』を成立させたと強調すれば選挙戦も戦いやすい」(自民党関係者)。岸田首相にとり、「経済安全保障推進法案」は唯一残された、自らの内閣の余命を図る起死回生の一手なのだ
ただ与党と政府関係者は無事、法案が今国会で成立したとしても、サプライチェーンの確保と基幹インフラの事前審査の実際の実施には非常に困難が伴うことも知っている。
同法案は、中国など潜在的な敵対国が日本に対する医療品などを含む特定重要物資の供給をストップした場合に備え、サプライチェーンの確保を最も重要な柱の一つにしているが、このサプライチェーンも原料、製品、部品などが人権侵害、児童労働などの問題のない製造拠点からきていることが保証されなければならない。
米国のバイデン大統領は昨年12月、ウイグル強制労働防止法案に署名した。強制労働で生産されたものではないと企業が証明できる場合を除き、中国・新疆ウイグル自治区からの産品の輸入が禁止されることになった。
日本政府は今国会で「経済安全保障推進法案」を成立させても、緊迫する米中関係を考えれば今後、米国は日本企業などに対し、サプライチェーンについてもより厳格な審査を求めてくるだろう。
岸田首相と林芳正外相が所属する派閥“宏池会”は会長だった大平正芳氏が50年前の1972年9月の日中国交正常化時の外相だった経緯もあり、親中派派閥と目されてきた。しかし、今の中国は周恩来首相が国交正常化交渉を仕切った中国とは似ても似つかない国となった。
岸田首相も林首相もカウンターパートが賢人政治家・周恩来ではなく、ウクライナ侵攻を是非とするロシアのプーチンを盟友とする習近平であることは肝に銘ずるべきだろう。「経済安全保障推進法案」の肝にあるのは覇権国、中国の脅威に対する日米同盟の強化なのだ。
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