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病気の原因がわからない赤ちゃんに対するゲノム解析で一定の効果、国際誌にも掲載

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 慶應義塾大学、大阪母子医療センター、国立成育医療研究センター、東京都立小児総合医療センター、日本医療研究開発機構の研究チームは2月4日、病気の原因がわからない赤ちゃんに対するゲノム解析で、約半数の原因が判明したと発表した。
 https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2022/2/4/28-92272/

 研究に当たっては、新生児科医とゲノム研究者からなる全国チームが、8都府県にある17の高度周産期医療センターからなるネットワークを作り上げたという。

 今回、このネットワークに属する医療機関において、2019年4月から21年3月までの2年間で、新生児集中治療室に入院するほど具合が悪く、熟練した新生児科医のチームをもってしても、従来の検査法では原因を決めることができなかった85名の重症の赤ちゃんに対してゲノム解析で遺伝子を調べることで、原因の究明を試みたとのこと。

 新生児集中治療室に入院する重症の赤ちゃんの1割程度は、極めて患者数の少ない病気にかかっている。このような病気の場合には、最終的な診断にたどり着くために、多くの検査が必要になる。

 しかし、赤ちゃんは体が小さいため多くの検査を行うことができず、さらに、体の余力が少なく症状が悪化するスピードも速いため、救命するためには原因を早く見つけて最も効果的な治療を行う必要がある。

 発表によると研究チームはまず、赤ちゃんから1 ccほど採血し、DNAを血液から取り出した。DNAは30億個の塩基が連続した複雑な構造をしており、これを正確に解読することができる最新の分析機器である「次世代シーケンサー」と超高速のコンピュータを組み合わせることで、DNAの持つ30億個の「文字」すべてを短期間で解読できるようにした。

 この解析法は、現在、健常な赤ちゃんに広く行われている生まれつきの病気(20疾患)を持っていないかを確認する血液検査先天性代謝異常等検査とは全く異なる。

 ゲノム解析の結果、85名のうち41名が生まれつきの遺伝性疾患にかかっていることが判明した。その大半は30億個あるDNAの文字のうち、わずか1つないし2つの文字が別の文字に書き換わったことが原因だった。

 原因が特定できた41名のうち20名では、診断結果をもとに検査や治療方針が変更された。具体的には、筋肉や皮膚の一部を切り取って調べる検査(筋生検・皮膚生検)を受けずに済んだり、効果の高い薬を使うことができたり、臓器移植によって救命できる可能性が判明した。

 研究チームは、「新生児医療において、ヒトDNAの30億個の文字を解読するという新しい医療技術が極めて有用であることがわかった」としている。

 また、現在は限られた医療施設でのみゲノム解析を行っているが今後は、「病気の原因が分からない赤ちゃんがいた場合には、デジタル技術を使って遠隔地からでも研究に参加できるようにする予定」という。

 さらに、将来的には、「生まれつき具合の悪い赤ちゃんが日本中のどこにいても、ゲノム解析の恩恵を受けられるように、通常の保険診療の中でも使えるようにしたい」と考えている。

 同時に、ゲノム解析にかかる時間を短縮し、「できるだけ早く診断結果を届けられるようにしていきたい」と考えている。

 研究結果は、2月3日に小児科学分野を代表する国際誌『The Journal of Pediatrics』のオンライン版に掲載された。

 診断・治療が難しいと言われる新生児医療で、こうした新たな医療技術により、多くの新生児が命を救われ、健康に育っていくことを心から願っている。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

鷲尾香一の ”WHAT‘S WHAT”

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最終更新:2022/02/28 06:00
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