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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > ランジャタイ国崎“実家”訪問を観る前と後

ランジャタイ国崎の“実家”訪問VTRを観た後の「不可避」について

バイきんぐ・西村「これは回避は無理ですね。不可避ですね」

 新しい世界の見え方をもたらす経験は、それ以前に自分が世界をどのように見ていたのかを同時に気づかせる経験でもある。

 16日の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)で、「チョウチンアンコウの罠、人間にも通用する説」が検証されていた。光の届かない深海に生息するチョウチンアンコウは、光るおとりで獲物を誘きよせて捕食する。これは人間にも通用するのではないか、という説だ。

 大きな倉庫を舞台におこなわれた今回の検証。ニセの特番でターゲットを呼び出し、突然、停電状態にする。そこにチョウチンアンコウを模したマシーンが出現。暗闇のなかでかすかに光るオレンジ色の発光体にターゲットが寄ってきたら、地面に敷かれたものをひっぱって“捕食”する仕掛けだ。

 ターゲットとなったのは、西村瑞樹(バイきんぐ)、あぁ~しらき、もう中学生、長谷川雅紀(錦鯉)、酒井貴士(ザ・マミィ)。彼・彼女らは一様に、暗闇のなかでチョウチンアンコウの灯りに誘きよせられ、“捕食”されてしまう。

 あとから振り返ってみると、ニセの特番で倉庫に誘きよせられたところから『水曜日』による“捕食”が始まっていたようにも見えるが、それはともかく、ドッキリがバラされた後のターゲットたちの証言が、この説の正しさを裏づけるようだった。もう中学生いわく、「このオレンジ色にひかれて、このオレンジ色だけが頼りで向かっていきました」。あぁ~しらきいわく、「普通に行っちゃいましたもん、光のあるほうに」。

 魚がチョウチンアンコウの光に誘きよせられる理由と、人間が暗闇のなかでわずかな光に引きよせられる理由が同じものなのかはよくわからないけれど、生き物ゆえの逃れられなさという点では似ているのかもしれない。「暗闇に灯りがあると、ちょっと安心するというか」と語ったバイきんぐ・西村によれば――

「これは回避は無理ですね。不可避ですね」

 興味深かったのが、赤外線カメラの映像だ。ターゲットとなった芸人たちが、時に一直線に、時にフラフラ周囲を詮索しながら、必ずオレンジ色の光ににじり寄っていく。そんな映像のアニマルプラネット感。ナショナルジオグラフィック感。よく見かけるような、人間が仕掛けた罠に害獣がかかる様子を赤外線カメラでとらえた映像のようでもある。なんだか、人間という衣装を剥ぎ取られた生物の生態を見たという感じがした。

 新しい世界の見え方をもたらす経験は、それ以前に自分が世界をどのように見ていたのかを同時に気づかせる経験でもある。人間の生物としての側面を露出させるような今回の説の映像は、人間を他の生物から切り離し、別物として見ていた私自身の視線に気づかせる。

 今回の説に限らず、『水曜日のダウンタウン』が検証してきたいくつかの説は、私たちが暗黙の了解にしている社会的な前提を剥ぐような作業なのかもしれない。そんな映像見たさに、私たちは“捕食”されているのかもしれない。

 さて、最後に、今回の説のターゲットになっていたもう中学生について。VTR中、彼がダンボールの小道具を手にすると、スタジオでそれを見ていた千原ジュニアが「自分でつくったんか?」とツッコんだ。芸人の小道具を別の誰かがつくるのはめずらしくないとはいえ、例の騒動が起こったあとでは、起こる前のようにダンボール芸を見ることは難しい。

 早く、「例の騒動が起こったあと」ではなく、「散々イジられて笑いになったあと」になってほしい。

飲用てれび(テレビウォッチャー)

関西在住のテレビウォッチャー。

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いんようてれび

最終更新:2022/02/23 18:00
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