『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ピンク男性ヒーロー登場! 変わる戦隊モノと2つの問題
#スーパー戦隊 #暴太郎戦隊ドンブラザーズ
3月6日にスタートするスーパー戦隊シリーズの最新作『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(テレビ朝日系)の制作発表記者会見が、2月9日に行われた。桃太郎をモチーフとした今作では、主人公のヒーロー・ドンモモタロウとともに、サルブラザー、イヌブラザー、キジブラザー、そしてオニシスターの仲間たちが悪と戦う。
これらのヒーローの中で、特に注目すべきは、俳優の鈴木浩文が変身するキジブラザーだ。桃太郎の仲間となったキジをイメージしたヒーローで、イメージカラーはピンク。スーパー戦隊シリーズで男性ヒーローのカラーがピンクとなるのは、今作が初めてだ。
これまでの“ピンクといえば女性ヒーローの色”という認識を覆し、まさに多様な価値観を認める今の時代に沿ったヒーローとなりそうなキジブラザー。しかし、これでは「中途半端だ」という意見もある。
「そもそも桃太郎がモチーフであれば、主人公のイメージカラーをピンクにして、これまでの固定観念を覆すという案もあったはず。あるいは、そろそろ女性ヒーローを主人公にしたスーパー戦隊シリーズが作られてもいい。時代はそこまできていますよね」(メディア関係者)
しかし、そう簡単に主人公をこれまでとは異なるスタイルへ大転換できない事情もあるようだ。
「スーパー戦隊シリーズと切り離せないのが、関連の子ども向けおもちゃやグッズ。作品を制作するだけでなく、おもちゃやグッズを売るところまでがビジネスです。ここまでずっと男児向けのおもちゃで展開してきたこともあり、主人公がピンクだと、おもちゃが売れなってしまう可能性もあるのでは。もちろんピンク好きの男児もいるでしょうし、子どもの頃から多様な考え方を当たり前のこととして育んでいくためには、おもちゃ側が変革することも重要です。でも、売り上げはシビアですし、現実はまだそこまで追いついてません。スーパー戦隊シリーズが、思い切ったシフトチェンジに至らないのは、おもちゃビジネスが絡んでいるからという側面もあるんですよね」(テレビ局関係者)
とはいえ“ヒーローもの”こそ、他ジャンルに比べて、積極的な変化が進んでいるジャンルだとも言われている。
「“戦い”や“力強さ”などを描くことが多い“ヒーローもの”は、つねにマチズモの象徴として扱われており、固定された価値観でしか描かれていないと批判を受けることも多かった。だからこそ、以前からポリコレへの取り組みにも積極的ではあるんですよね。それこそ海外のマーベル・コミックやDCコミックスでは、比較的早い段階でLGBTQのヒーローも登場していますし、女性ヒーローの主人公作もとても多い。マーベル・シネマティック・ユニバースについては、今後女性ヒーローの割合のほうが増えそうだとも言われています。
スーパー戦隊シリーズについても、過去作を見ると、女性ヒーローはピンクだけでなくあらゆる色を担当していて、少しずつではあるものの、着実に幅広い価値観を認める方向性に進んでいるんです。今回、初めてピンクの男性ヒーローが登場したのは自然なことであり、今後も徐々に変化していくのは間違いないでしょう」(同)
一方で保守的な“大人の特撮ファン”の存在も気にしなくてはならない。
「これはヒーローものだけに限らず、歴史がある多くのエンタメにおける問題でもあるのですが、長く受け継がれてきたスタイルが近年の“ポリコレ的な作用”によって変化することに、拒否反応を示すファンは少なくない。実際、マーベルなど女性ヒーローの増加に対する批判的なファンの声も多いですからね。とはいえ、世の中が変わっているのに、ヒーローものだけが変わらないというのも難しい。保守的な支持者の意識をどのようにして変えていくかも、大きな課題だと思います」(同)
時代とともに変化していくのがエンターテインメントというもの。スーパー戦隊シリーズもまた、確実に変化していく。
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