サンリオ、ロフト…「バレンタイン」が炎上しまくるのはなぜ? 広告代理店マンが分析
#炎上 #広告 #バレンタイン
今年もバレンタイン商戦がピークを迎えている。毎年、有名ブランド菓子店や小売店などがユニークな広告を打って消費者の心を掴まえようとしているが、それが裏目に出てしまうこともしばしば。ズレたメッセージを発信して炎上騒動になる例も少なくない。
サンリオ、ロフトの「バレンタイン」炎上
2019年、生活雑貨ストア「ロフト」のバレンタインデーキャンペーンでは、『女の子って楽しい!』をメッセージとした広告動画が公開された。動画には、キッチュなイラストのアニメーションで金髪&ミニスカート姿の“女の子”たちが登場。親しげにガールズトークを繰り広げていたのだが、ストーリーが進んでいくとなにやら不穏な雰囲気へ。
「うちのカレシマジカッコよくない?」
「わかるぅ~超イイ人そうだよね~」
「……」
最終的には「……てかやっぱ女子だけって落ち着く~」として、“女の子”たちが集合したキービジュアルが映されるのだが、実は後ろ手で互いに髪を引っ張ったり、背中をつねり合ったりしているのだ。
表面上では親しげに会話しているものの、裏ではギスギスしている。こういう陰湿さが女性の友情だろう、と言わんばかりの内容にネットで批判が殺到。「女性をバカにしてる」「誰をターゲットにしているのかわからない」とネガティブな意見が多く寄せられ、結果としてロフトは謝罪し、広告掲出を取り止めることに。
また直近では、女性向け雑貨店「ITS’DEMO(イッツデモ)」のサンリオ商品も議論を呼んだ。同店はバレンタインに向けてサンリオの人気キャラクター「マイメロディ」とのコラボ商品を販売すると告知したのだが、商品デザインに盛り込まれたマイメロディのママのセリフ──「女の敵は、いつだって女なのよ」「女ってね、ダメな男ほど放っておけないものなのよ」など──が、ステレオタイプな女性像、男性像を反映しているなどと問題視されたのだ。
マイメロのママが登場した2005年頃にはスパイスの利いた名言として好意的に受け取るファンも多かったようだが、令和の価値観にはそぐわないセリフだった──ばかりか、これにGOサインを出した企業側の認識や体制にドン引きした消費者も多かったようだ。
「バレンタイン広告のターゲットは、主に都市部に住む20代~30代の女性です。炎上した2件も、女性的なイラストやキャラクターが消費者の声を代弁する、という体裁をとった女性向けの広告や商品。でも、結局のところはステレオタイプ的な女性像の域を出ていなかったことが問題でしょう。
ここ数年、ジェンダー問題で炎上する広告は本当に多いですが、広告代理店はあくまでクライアントの下請けなので、基本的には企業側の意向に沿うしかない。結局は、クライアントのジェンダー問題への認識・対策に依るところが大きいと思います」(広告代理店関係者A)
さらに、別の広告代理店関係者Bはこう分析する。
「そもそも、バレンタインって『この日だけは女性が男性にチョコを贈って、告白してもOK』というイベントですよね。この概念自体がジェンダーレスなものとは言えず、現在の消費者の恋愛観や“気分”からはズレているわけです。でも、広告ってやはり目立ってナンボですから、キャッチーさを狙ううちに、どうしても対抗軸を打ち出したくなるんですよね。バレンタインはとくに男性・女性でわかりやすいので、その広告メッセージにも、ステレオタイプな男女の関係性を表す表現が含まれてしまいやすいのだと思います」
一方で、最近ではバレンタインを、友達同士でチョコを贈り合うもの、自分のためにちょっと高級なチョコを買うための日、として楽しむ消費者も増えている。
また、高級チョコブランド「ゴディバ」は2018年、バレンタインに合わせて「日本は、義理チョコをやめよう」という大胆な広告メッセージを発信。女性にとって(あるいは男性にとっても)負担になっていた職場の慣習に疑問をぶつけた。結果、一部の消費者から「よく言ってくれた!」と好感的に受け止められるという例もあった。
「消費者はもう、広告が古い価値観を押し付けてきたり、わかりやすい2項対立を持ち出して煽ってくることに違和感を覚えます。広告にとっては、これまでのようなステレオタイプな切り口が、古臭くてダサいばかりか、炎上さえしかねないものだと認識しないといけないと思います」(広告代理店関係者B)
バレンタイン広告は、甘~いチョコレートでいらぬ火傷を負わぬよう、あらゆる意味で質の高いクリエイティブが求められそうだ。
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