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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > トランプ大統領の狂支持者が連邦議会襲撃!
世界は映画を見ていれば大体わかる#32

トランプ前大統領の狂支持者が連邦議会襲撃!群集心理に突き動かされ暴徒化

)我に返った暴動の参加者、それでも意気揚々?

 激しいおしくらまんじゅうによって呼吸困難に陥る者が続出するが、交代人員がほとんどいない警官に対して、暴徒らは次々入れ替わっていく。次第に警官らは押し戻されていく。

 首都警察のマイク・ファノン巡査は、首筋からいかついタトゥーをのぞかせる20年のベテランで、彼は相棒のジミー・オルブライト巡査とともに「トンネル」の応援に向かう。群衆が取り囲む議会を歩く途中、「クソ警官」「反逆者」と罵られながら現場へ急ぐ。

「トンネル」にたどり着いた2人は疲れ果てた警官と入れ替わり、最前線に飛び込む。この加勢で勢いづいた警官隊は暴徒を押し戻すことに成功するが、一瞬の隙を突かれてファノン巡査ひとりが引きずり出される。四方八方から殴打されるファノンは「子供がいるんだ。助けてくれ」と命乞いをする。暴力が収まった一時、ファノンの手を引っ張る者がいた。相棒のオルブライトだ。

 意識混濁し横たわるファノンにオルブライトは声をかけ続ける。

「しっかりしろ、死ぬな。また一緒に狩りに行こう。もうすぐカモ狩りの季節だぞ……!」

 ファノンはこの時意識を失っており、自身に装着したカメラの映像を後で見て当時の状況を知ることになる。

 事態を静観していたトランプがようやく支持者に向けて解散を促し、暴動の勢いは弱まった。これに呼応するようにフル装備の州兵が応援にかけつけ、議会への侵入者は追い出されていく。こうして4時間にも渡る議会襲撃事件は終わりを迎えようとしていた。

 本作は暴徒と化したデモ参加者自らの撮影によるもの、議事堂内の監視カメラや警官のボディカメラ、双方の映像によって当時の緊迫した様子が伝わる。

 驚くのは暴動の参加者、支持者がインタビューに応じており、平和的なデモだったはずなのに、群集心理でおかしくなったんだと言い訳しているところ。彼らは記録の数々が自分たちの偉業であるかのように意気揚々としているが、暴力で民主主義を否定しようとしたクーデター未遂の記録にしか見えない。車いすに乗っていたプラウド・ボーイズのブロックは暴動後、仲間たちから置き去りにされテラスの上に放置された。彼をテラスの階段から下したのは議会警官たちだった。皆兄弟同然、理想を高くもった連中じゃなかったの?

 ありもしない陰謀論を主張し、アメリカの民主主義が失われようとしている、と叫ぶトランプ支持者たちだが、アメリカが専制国家だったらデモ参加者に容赦なく銃弾の雨が降り注いだはず。

 自らSNSで暴れまわる様子を拡散していた暴徒の多くはそれらを証拠として逮捕された。死刑、重労働刑を支持しているという暴動の参加者は逮捕され9日間入浴を許されず独房に閉じ込められたため「非人道的でアメリカらしくない」と抗議している。重労働は構わないけど風呂には入りたいって……。

「暴動なんかじゃない。ドアを叩き中に入っただけなんだ」

と真顔でいう彼らはちっとも反省なんかしていない。当のトランプ自身が反省せずに罪にも問われてないぐらいだから。暴徒に袋叩きにされたファノン巡査は脳損傷を負い今もトラウマに苦しみ、現場で地獄を見たことに耐えきれず自殺する警官もいたというのに。アメリカが民主主義国家だったからこそ暴動の参加者は堂々とインタビューに答えたりできるのだろう。

 しかし国の政治の在り方を巡って物申そうという人々が、行動を起こすだけアメリカはマシかもしれないね。日本では首相が自らの疑惑について「回答を差し控える」と答弁することが許されて、それでも選挙で政権与党が圧勝したりするんだから。

しばりやトーマス(映画ライター)

関西を中心に活動するフリーの映画面白コメンテイター。どうでもいい時事ネタを収集する企画「地下ニュースグランプリ」主催。

Twitter:@sivariyathomas

しばりやとーます

最終更新:2023/02/24 11:48
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