Spotifyからニール・ヤング音源引き上げ!ポッドキャストの未来を占う言論の自由と規制
#Spotify #Saku Yanagawa
Spotify、株価に影響も…「検閲」は行わず
そして、この状況を受け、先月1月26日、ついに大物歌手ニール・ヤングが動いた。かねてからの『ジョー・ローガン・エクスペリエンス』でのゲストおよび、ローガン自身の過激な発言、とりわけワクチンに関する発言を擁護することはできず、ローガンの番組をSpotify側が削除しないならば、自身の楽曲のすべてをプラットフォーム上から引き上げると宣言したのだ。書面の中で「俺か、ローガンかどちらか選べ」と言い放った。
そして、Spotifyはローガンを選んだ。
ニール・ヤングは60年代から活躍を続ける、言わずと知れた大御所ミュージシャンで、カナダ出身ながら、アメリカの政治にも度々言及し、ブッシュ政権やトランプ政権をこれまで名指しで批判してきたことでも有名だ。音楽業界にとどまらず、幅広い交友関係をもち、多くの人々の「兄貴分」として強い影響力を持つ。
実はニール・ヤングは音質を理由に15年にもSpotifyを離脱しており、その後自身のプラットフォーム「Pono」に移行しようと試みるも、それが上手く進まず「出戻った」という背景がある。今回の離脱も「Pono」への再移行の口実か、という見立ても散見されるが真意はまだわからない。
そして、このニール・ヤングのコメントを受け、翌週には同じく大物シンガー・ソングライターのジョニ・ミッチェルもSpotifyからの離脱を表明した。
医療関係者からの書簡、大物ミュージシャンの離脱などでSpotifyの株価は下がり、市場価値で2000億円以上を失ったとも言われている。
これを受け、即座にSpotify社の広報が声明を発表した。
「我々には、リスナーの安全とクリエイターの表現の自由のバランスを取りながら今後もコンテンツを配信していく責任があります。その上でクリエイターを導くプラットフォームのルールを策定し、関連の話題が含まれるコンテンツには注意書きを掲載します」
同社のCEOダニエル・エクもコメントの中で「Spotifyには、自分が同意できない人物、見解がたくさんあります。だからこそ、私にとって大切なのは、コンテンツ検閲の立場を取らず、それでもルールを徹底させ、それを破った者には責任を取らせることです」と述べた。
一方のローガンは2月1日、自身のインスタグラムに10分にもわたるコメントの動画を投稿。
「俺はニール・ヤングとジョニ・ミッチェルの大ファンだっただけに、ただただ残念だ。Spotifyにも迷惑をかけた。ただSpotify社の新しい取り決めには敬意を払うさ」
そして「俺が呼んだゲストは非常に信用できるし、なおかつ非常に知的で経験豊富だが、主流派とは異なる意見を持ってるんだ。だからこそ、彼らの意見を聞きたかった。俺は医者でも科学者でもないから、彼らが正しいかどうかは分からない。ただ話を聞きたいし、間違っていることがあれば修正する。今後はそういうゲストを呼んだ後には主流派も招いて、バランスを保っていくぜ」と、答えた。
これまでYouTubeやフェイスブック、ツイッターなど多くのプラットフォームをめぐり議論されてきた「表現の自由」と「規制」のせめぎ合い。プラットフォームがそのコンテンツにどこまで規制をし、どこまで責任を負うべきなのかという問題が、ついに「喋り」に力点を置いたポッドキャストというメディアで顕在化した今回の騒動。
「ポッドキャストの帝王」としてまさに「言論の自由」を標榜し、戦ってきたジョー・ローガン。彼の今後の立ち居振る舞いが後続のコメディアンの「言論」の未来に大きくかかっているかもしれない。
<ジョー・ローガン>
1967年生まれのスタンダップコメディアン。80年代にボストンで舞台に立ち始めると、その後ロサンゼルスへ拠点を移しテレビ番組の司会を務める。2009年に立ち上げた自身のポッドキャスト番組『ジョー・ローガン・エクスペリエンス』が多くのリスナーを獲得し、「最も稼ぐポッドキャスター」の称号を得る。テキサス州、オースティン在住。
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