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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 岸田首相、絵空事の「新しい資本主義」

岸田文雄首相が掲げる絵空事の「新しい資本主義」と後手後手のコロナ対策

人事制度がトヨタを迷走させる?

 私が現代編集長の頃は、トヨタの悪口はなかなかやりにくかった時代だった。なぜなら、トヨタだけではないが、自動車会社は大口の広告主だったからだ。

 トヨタの批判や内部の悪い話を書くと、広告部からすっ飛んでくる。当然、トヨタにご注進に走る。

 電通から「ちょっとお話が」と電話がかかる。脅し文句は「広告を引き上げる」というものだ。

 うちの雑誌だけではなかったが、講談社の子会社には「ベストカー」という雑誌があり、そこに迷惑をかけてしまうという配慮も多少はあった。

 このようにトヨタ批判を何度も載せるというのは、広告主としての力も落ちてきたに違いない。反対に、雑誌のほうにも力がないから、トヨタとしては広告を出すメリットがないということもあるのだろう。

 さて現代にいこう。

「トヨタ自動車内ではいま『ミドルの崩壊が始まった』と言われている。入社数年の若手ではなく、評価の高い優秀な40代から50代の管理職は、新天地を求めて自己都合退職しているのだ」(現代)

 次々に優秀な人材、それも中堅管理職が次々に辞めていっているというのだから、ただごとではない。しかし、
「業績の面では、コロナ禍にあってもトヨタは絶好調だ。’22年3月期決算の純利益はおそらく3兆円に迫り、過去最高益を更新するだろう。SUVの『RAV4』『ハリアー』などヒット車も多く、’21年の世界販売台数では首位をキープしている。
 給料も高い。50代の部長クラスだと年収2000万円近く、40代半ばの管理職でも1500万円は超えている。そんな恵まれた状況にもかかわらず、なぜ将来を嘱望された人材が相次いで辞めていくのか」(同)

 その背景には、豊田社長の長男、大輔のことがあるというのである。

 彼は、慶應大学を卒業後、アメリカのバブソン大学に留学している。父親と同じ学歴である。2016年にトヨタに入社し、現在は自動運転のソフトウェアやスマートシティを開発する子会社「ウーブン・プラネット・ホールディングス」でシニアバイスプレジデントを務めている。

 トヨタは2019年1月に人事制度を大きく変えているという。

 その狙いは、出世の階段を減らすことで有能な若手を抜擢しやすくするためだそうだ。

「基幹職の昇格の梯子を一段上るには4~5年ほどかかる。30代後半で3級に昇格してから常務役員までには3つの梯子を上るため、常務役員就任は50代前半というパターンが多かったが、この梯子を取り払った」(同)

 若手抜擢に人間力重視と、時代に沿ったいいことずくめの制度改革に見えるかもしれないが、井上は社内はそうではないという。

「額面通りに受け止めている社員は少ない。トヨタ元役員が指摘する。

「『若手抜擢』の大義名分は、まだ30代前半の大輔氏を抜擢しやすくするため。『人間力』なんて曖昧な定性的評価を導入したのは、章男社長やその側近の好き嫌い人事をしやすくするため。多くの社員がそれを見抜いて、白けている」(同)

 井上は、「組織の問題は、外部からは見えづらい。新聞報道や、近年トヨタが力を入れている広報メディアから見えるトヨタ像だけが、真の姿ではない」という。

 豊田社長は60代半ば。そろそろ後継者を決めておきたいと思っても不思議ではない。だが、長男だからというだけで、引き上げるのはまだ早いのではないか。

 これからEV戦争が本格的に始まる。敵はテスラだけではない。中国が手ごろな値段のEV車を次々に作り出して、国中でテスト走行をしている。

 EVに乗り遅れたトヨタが参戦しても、勝てるかどうかはわからない。決戦の時を控えて、優秀な人材が次々に辞めていっているとしたら、トヨタがいつまでも世界一の称号を持ち続けられるか、心配である。

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