『ちょっと思い出しただけ』何気ない日々、コロナ過の“今”では何もかもが愛おしい
#映画 #花束みたいな恋をした #ちょっと思い出しただけ #ジム・ジャームッシュ
コロナ過によって強調される“戻れない日々”
過ぎ去った日々が戻らないことは、当たり前のことではあるが、コロナ過の今では、よりそれを感じないではいられない。
私たちは恋愛に限らず、日常の中で、何気ない物や場所を見たときに、ふと昔の記憶を思い出すことがある。その思い出の中の自分たちは、マスクをしていない。コロナ過の現代においては、少し前の日常さえもがファンタジーのようにも感じられてしまうし、戻れない過去がより強調されているのだ。
伊藤沙莉は、過去の出演作『ボクたちはみんな大人になれなかった』(2021)やドラマ『モモウメ』(同)などを観てもわかる通り、「ザ・自然体女優」だ。池松壮亮も右に同じ。池松は、セリフを発するというより、ボソっとした聴き取りづらい声でしゃべる……しかし、それがいいのだ。
池松にとっても、監督の松居大悟にとっても、久しぶりの恋愛映画でもあることから、ぎこちなさが伝わってくることは無視できない。伊藤と池松は、今や日本を代表する俳優同士であるが、実は今作が初共演。単純にこのふたりが共演したら、どうなるのだろうかという興味をそそられる。監督は、その慣れていないふたりの共演によって生まれる化学反応を狙っていたのだ。
恋愛映画に慣れていない監督と俳優たちの独特の距離感が、作品にはっきりと反映されていながらも、それが決して悪く作用していない。むしろプラスに働いている。
恋人同士であっても、そもそも別の人間。互いに全てを理解することなんてできるはずもない中で、観察し合い、少しずつ歩み寄っていく過程こそ、恋愛における駆け引きや醍醐味を感じさせる。
今作を観て感じることは、人それぞれ。100人いれば、100通りの感じ方ができるだろう。それは、気づくと、自分自身の経験と照らし合わせて観ているからだ。今までの人生経験の中で、人を好きになったことがあるのであれば、今作のふたりに共通する部分を見つけられるだろうし、なにかを「ちょっと思い出す」だろう。
『ちょっと思い出しただけ』
2022年2月11日(金・祝)全国公開
■キャスト・スタッフ
出演:池松壮亮、伊藤沙莉 ほか
監督・脚本:松居大悟
主題歌:クリープハイプ「ナイトオンザプラネット」(ユニバーサル シグマ)
■制作・配給:東京テアトル
公式サイト:choiomo.com
公式Twitter:@choiomo_movie
Instagram:@choiomo_movie
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