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日刊サイゾー トップ > エンタメ  > 何もかもが愛おしい『ちょっと思い出しただけ』
伊藤沙莉&池松壮亮の“自然体”な恋愛関係

『ちょっと思い出しただけ』何気ない日々、コロナ過の“今”では何もかもが愛おしい

『ちょっと思い出しただけ』何気ない日々、コロナ過の今では何もかもが愛おしいの画像1
映画『ちょっと思い出しただけ』©︎2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会

 第34回東京国際映画賞で先行上映され、観客賞とスペシャル・メンションをW受賞した映画『ちょっと思い出しただけ』が、2022年2月11日から公開される。

 今作が誕生したきっかけは、少し変わっている。きっかけとなった、クリープハイプ・尾崎世界観の楽曲「ナイトオンザプラネット」は、ジム・ジャームッシュ監督作品『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1991)に着想を得て、リスペクトを込めながら制作された楽曲である。

 そこから映画として肉付けされていった、2重構造の作品ということもあり、劇中にも『ナイト・オン・ザ・プラネット』を観ているシーンや、オマージュがちりばめられている。特にウィノナ・ライダー演じるコーキーのロサンゼルスパートに影響を受けているといえるだろう。

 今作は、ある男女ふたりの6年間の物語だ。映画的に演出されたドラマチックな出来事や事件が起きるわけでもない、淡々と過ぎ去る日々。タイムラインをシャッフルしながら描いていく。

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©︎2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会

 ある恋人たちの何気ない日々を描いたという点においては、2021年のヒット作『花束みたいな恋をした』も共通したテーマを感じることができる。ただ、『花束みたいな恋をした』の決定的な問題点は、主人公たちがサブカル好きの男女と謳われているのに、知識がミーハーレベルだったことだ。誰もが共感できる等身大の恋愛映画という点ではよかったのだが、変な部分でハードルを上げてしまい、それがノイズとなっているのが残念でならなかった。

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©︎2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会

 しかし、今作はまさに等身大の男女の物語。出演者たちが自然体で、セリフも普通のトーンで普段の会話のように展開されることで、よりリアルな日常が演出される。ありふれた物語ではあるのだが、どこか幻想的で、どこか切ない。時には痛々しくもあり、照れくさくもある。形は違っていたとしても、誰もが共感できる作品だろう。

【ストーリー】
照明スタッフの照生と、タクシードライバーの葉。物語はふたりが別れてしまった後から始まり、時が巻き戻されていく。愛し合った日、喧嘩した日、冗談を言い合った日、出会った日……。コロナ禍より前の世界に戻れないように、誰もが戻れない過去を抱えて生きている。そんな日々を”ちょっと思い出しただけ”。

※次のページから映画のネタバレを含みます!

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