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日刊サイゾー トップ > エンタメ > テレビ  > 『魔改造の夜』技術者たちの本気の“遊び”!
「DVDプレイヤーボウリング」「ペンギンちゃん大縄跳び」

『魔改造の夜』RコーにDンソー、町工場も 技術者たちの本気の“遊び”がアツい!

『魔改造の夜』で考える社会

 2つ目の種目は、題して「ペンギンちゃん大縄跳び」だった。幼児が遊ぶ5体のペンギンちゃんのぬいぐるみを魔改造し、1分間でより多く大縄跳びさせたチームが優勝という競技だ。

 S陽が作ったのは、題して「ペン太5ん(ペンタゴン)」。「ハルク・ボーガン」といい、このチームはネーミングのセンスがいい。背中合わせで円陣になったペンギンちゃんがバネ仕掛けの脚をモーターで収縮し、その反動でジャンプするという仕組みのようだ。一方、RコーとDンソーのペンギンちゃんたちは、人間の回す縄をセンサーが察知することで跳び上がるという構造である。

 下町工場と大企業の対比が面白いのだ。「ペン太5ん」が披露されるや「センサーはないんだ!?」と他社は驚き、逆に大手のペンギンが披露されるとS陽の社長は「我々もやろうとしたことだけど断念したんだよ」とその技術力に素直に感嘆する。

 特筆したいのは、S陽の雰囲気のよさだ。この競技でプロジェクトのリーダーに選ばれた澁江さんは派遣の技能工として4年前にS陽にやって来て、仕事ぶりが認められ正社員に登用された人材である。彼がエンジニアになって初の仕事が、このプロジェクトのリーダーなのだ。この“派遣の星”への期待度が窺えるし、NHKを社員教育に利用する同社の起用法も人間味まんてんだ。

 内部構造だけじゃない。外装担当である事務職の女性社員は、体毛を短くサマーカットすることでペンギンちゃんたちの軽量化に成功。さらに、縄跳びの回し手はS陽入社以前から同僚として共に働いていた社員2人を抜擢。目的に対する一体感が高く、本当にいい会社だと思う。

 そして本番。ペン太5んはリズミカルで安定した跳躍を見せ、そのテンポに回し手である人間のほうが合わせていくというスタイルで1分間をノーミスで完走した。結果、このペンギンちゃんたちは64回という好記録を弾き出したのだ。派遣上がりと転職組による成果であり、人間とペンギンによる完璧なコラボでもあった。

 対するRコーは、人間が回す縄の速度と動きを実測し、そこからペンギンちゃんの仕様を導き出すというアプローチから始めた。まず跳ばすところから始め、そこに縄を合わせにいったS陽とは真逆の工程だ。理系脳って、やっぱりスゴい! しかも、回し手としてスカウトしたのはK-1全日本トーナメントのベスト4という経歴を持つ元キックボクサーである。縄跳びはお手のものの彼。社員数約8万人を擁するRコーならではの召喚だ。目指す記録は120回。1分間に2回である。

 期待値MAXで迎えた本番、Rコーのペンギンちゃんが一向に跳ばないのだ。センサー検知がうまくいっていない。練習ではうまくいっていたのに……。どうやら会場の照明が暗く、センサーに誤差が出たらしい。これが、理論と実践の違いだ。加えて、縄の回し方が練習時とかなり違う。回し手の焦りが原因だろう。焦りがさらに焦りを呼び、回し手の再現性でS陽に劣っている。

 トリを務めたDンソーは構造としてはRコーに似ていたが、こちらは安定して跳躍した。ただ、ペンギンちゃんの着るコスチュームが邪魔をし、途中で縄に引っかかったのは痛かった。女性社員のアシストでペンギンを軽量化したS陽と、衣装が足を引っ張ったDンソー。ある意味、対照的だ。

 というわけで、この競技は町工場であるS陽が優勝! まさに、下町ロケットのような展開を見せてもらった。いかにも町工場的な手堅いアプローチの勝利である。

 はっきり言って、ポテンシャルはRコーが1番だった。S陽の方式は安定はすれど回数に上限があり、伸びしろはない。上を目指すならRコーとDンソーのやり方が正しい。でも、そうなると安定性と再現性でどうしても劣る。挑戦したからこそ、Rコーは失敗したということ。将来的にはセンサーが勝つだろうけど、現時点では人間が合わせにいくやり方が確実といったところか。RコーとDンソーの仕上げが進んだ状態も、また見てみたいと思った。

 今回の『魔改造の夜』を、現実に当てはめて考えてみたい。人間が機械に合わせる形を想定すれば開発は手堅いが、より実生活で役立つのは逆のほうだ。人間の縄回しに機械がセンサーで合わせてくれる社会を、多くの人は待ち望んでいる。

 安定性&再現性と進歩性、どちらの要素も技術者には必要。つまり、三者三様だった今回の『魔改造の夜』は、企業性の違いが出てとてもよかった。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2022/02/08 20:00
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