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「下がらないガソリン価格」岸田政権補助金政策も不発 トリガー条項にかかる期待

「下がらないガソリン価格」岸田政権補助金政策も不発 トリガー条項にかかる期待の画像1

 ガソリン価格の高騰を抑えるための経済産業省による石油元売りへの補助金政策が実施された。だが、ガソリン小売価格は一向に低下する兆しが見えない。こうした状況に、トリガー条項の発動の声が再び高まってきている。

 資源エネルギー庁が2日に発表した1月31日時点のレギュラーガソリンの店頭価格(全国平均)は、1リットルあたり170.9円だった。

 21年1月時点で1リットルあたり130円台だったから、1年間で40円(約25%)近く値上がりしたことになる。(表)

「下がらないガソリン価格」岸田政権補助金政策も不発 トリガー条項にかかる期待の画像2

 筆者は、21年10月26日にガソリンの高騰に歯止めかけるか… 課税停止で価格調整する「トリガー条項」発動は?|日刊サイゾーcyzo.com)で、ガソリン価格の高騰時には、ガ課税を停止する「トリガー条項」があるが、この条項が発動される可能性は極めて低いことを指摘した。

 やはり政府はトリガー条項を発動することはなく、代替案として、ガソリンの小売価格を170円程度に抑える対策として、石油元売り各社に対して補助金を出す政策を実施した。

 今回の補助金は1リットルあたり3.4円だが、実際の価格抑制効果は2.5円にとどまった。これは、対策が実施される前に仕入れた在庫のガソリンが残っていることで、補助金が効果に反映されるのには時間がかかるためだ。

 1月31日時点のレギュラー1リットルあたりのガソリン小売価格は、前週比で0.7円(0.4%)値上がりしたが、経産省では「市場実勢は173.4円を予想していたが、補助金の効果で170.9円に価格が抑えられた」と見ている。

 しかし、今後も経産省が目論むように170円程度に抑制できるかは、非常に不透明だ。新型コロナウイルス後の生産活動の活発化、景気回復による需要増を見込み、原油価格は上昇が続いている。

 すでに、1バレルあたり88ドルを超える水準にまで価格が上昇し、14年10月以来の高値を更新している。

 原油価格の上昇を受け、ガソリン小売価格も13年ぶりの高値水準が続いており、経産省は2月3日からの補助金を1リットルあたり3.4円から3.7円に引き上げた。それでも、ガソリン価格の低下にはつながらず、目先は価格上昇と補助金による価格抑制との“イタチごっこ”が続くだろう。

 こうした状況を受け、野党からは「トリガー条項」の凍結解除を求める声が強まっている。

 トリガー条項は、総務省が発表する小売物価統計調査でレギュラーガソリンの1リットル当たりの小売価格が、3カ月連続で160円を超えた場合、翌月からガソリン税の揮発油税の特例税率となっている上乗せ税率分の25.1円の課税を停止するというもの。停止後に3カ月連続でレギュラーガソリンが1リットル当たりの小売価格が130 円を下回った場合には、課税停止が解除される仕組みだ。

 しかし、11年の東日本大震災の復興財源にするために、同年4月27日から発動が凍結された。しかも、凍結は事実上、無期限となっており、トリガー条項を復活(凍結を解除する)させる方法は明確ではない。つまり、事実上の廃止になっている。

 萩生田光一経産相は1月のレビ番組で、凍結解除を「否定しない」と発言したが、その後に、岸田首相自らが「あらゆる選択肢を排除しないが、少なくとも現在での解除は政府として考えていない」と発言を打ち消している。

 さらに、萩生田経産相も2月1日の記者会見で、「トリガー条項では灯油の価格は下げられない」と前言を覆した。

 つまり、政府としては、3円程度の補助金を出しても、25円の税金が入ってくることを選んだわけだ。税金を下げるよりも、その税金よりも少額の補助金で“お茶を濁そうという態度”であることが見え見えだ。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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最終更新:2022/02/06 12:00
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