SixTONES『CITY』の円環性とジャニーズが貫くCD=サブスク未解禁たる秘境
#音楽 #ジャニーズ #SixTONES #CITY
暗示された『CITY(シティ)』=『CD(シディ)』説
さらに本作は、基本は同じ収録曲ながらも初回盤A(朝から)・初回盤B(夕方から)・通常盤(夜から)でスタートポイントが違うのも特徴だ。ここで作品の全体を、ざっくりと<夜:感情的・葛藤>、<深夜:解放・熱情>、<朝:浮き沈み・出発>、<夕方:疾走・高揚>としよう。
すると通常盤では夜の感情的な葛藤を深夜に解放し、朝に憂鬱を覚えつつ仕切り直して出発、未来へ向かって期待とともに走り出すという流れになる。初回盤Aは朝の浮き沈みからスタートし、夕方の高揚、センチメンタルな夜を経て、深夜にそれが爆発するというアッパーな展開。
初回盤Bでは夕方の高揚が夜とともに葛藤に変わり、深夜にそれが解放され、朝の目覚めとともにまた一日が始まる。さらに、もうひとつの可能性として深夜から始まる「捏造盤」をリスナーが“想像する”ことも可能だ。こちらは深夜の熱情から目覚めた朝、寝ぼけながら浮き沈みを抑えて家を出る。そして夕方に高揚感を覚え、夜の葛藤のなかでエンディングへ。
つまり『CITY』には正式には3つ、“捏造”すれば4つのマルチバースが存在することになる。ケンドリック・ラマーのピューリッツァー賞受賞作『DAMN.』は、曲順を逆にしてもストーリーが成立するということをコンセプトのひとつにし、そのヴァージョンの限定CDも発売されたが、『CITY』はどこからでもスタートできる円環性を持っている。そして、その構造コンセプトを貫徹させる再生メディアはレコードやカセットテープ、サブスクリプションよりも、どこからでも頭出しでき、裏返す必要のない円盤CDが好相性だろう。
世界で初めて市販されたソニーのCDプレイヤー「CDP-101」の発売が1982年で、今年はCDが個人的に再生されるようになり40年の節目。そんな年を待っていたかのように、サブスク未解禁のまま発売された『CITY』は、日本においてアイドルが葬ったCDの音楽性を、アイドルの手で再獲得する試みとしても聴くことができる。さらには世界においてマイノリティとなる運命を背負ったCDが自らの多様性を叫んでいるようでもある。
よって陰謀論的かもしれないが、私は『CITY(シティ)』=『CD(シディ)』説を推す。もし未来にCD復権というカウンターが起きたとしたら、きっと本作を思い出すだろう。そして彼ら(ジャニーズ)には、サブスク未解禁の秘境を守り貫いてほしい。
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