映画『355』が打ち出した女性たちのアクション映画を作る意義
#スパイ #アクション
タイトルの「355」の意味とは?
本作のタイトルである「355」は、18世紀のアメリカ独立戦争時代に実在した女性スパイの暗号名から取られている。その謎のスパイの正体は、アメリカ独立戦争未解決のミステリーと言われているそうだ。
355は初代アメリカ合衆国大統領ジョージ・ワシントンの諜報機関で中枢的役割を果たした実在の女性で、イギリス軍の動向についての機密情報をアメリカ将校たちに伝えた人物。彼女が使った数字の暗号は入念なシステムで、全てのエージェントの名前と居場所を秘匿化することに成功していたという。それから何百年が経っても彼女の革新的な成果は風化しておらず、現在でもスパイの女性たちは互いを355と言及することがあるそうだ。
プロデューサー兼主演のジェシカ・チャステインもまた「どの分野にも、舞台裏で人知れず根気強く働いてきた女性がいます。歴史の本を見ても、女性たちのストーリー、彼女たちが成し遂げたことが書かれていることは稀です。355というタイトルの映画は、認識されていない女性たちに対する敬意なのです。彼女たちのパワー、強さ、達成したことを詳しく説明し、『ありがとう』と言っているのです」と、そのタイトルの重要性について語っていた。『355』は過去に活躍した女性にも多大な敬意を払い、やはり女性たちのアクション映画としての意義をとことん追求した映画になっているのだ。
ただ、この『355』は、最初に掲げたようにマクガフィンを取り合うような物語には新鮮味を感じないし、『X-MEN:ダーク・フェニックス』(19)でも酷評されてしまったサイモン・キンバーグ監督の演出も重圧さが欠けていて垢抜けない。作品の出来そのものを冷静に考えると、完成度は決して高くはないというのも正直なところだ。
だが、『355』には女性たちの連帯感やキャラクターの魅力を推したアクション映画を現代に作るという意義だけでなく、これまでの映画界の問題を根底から変えていくような志の高さもある。今後もこうした女性たちのアクション映画は作られてほしいし、直近で3月18日公開予定のカレン・ギラン主演作『ガンパウダー・ミルクシェイク』が待ち受けているのも嬉しい限りだ。スクリーンで『355』を堪能した後は、こちらも合わせてチェックしてほしい。
『355』
2月4日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
監督:サイモン・キンバーグ
出演:ジェシカ・チャステイン ペネロペ・クルス ファン・ビンビン ダイアン・クルーガー ルピタ・ニョンゴ with エドガー・ラミレス and セバスチャン・スタン
2022年/イギリス/英語/122分/カラー/ドルビー・デジタル/スコープ/原題:THE 355/PG-12/字幕翻訳:チオキ真理/提供:木下グループ/配給:キノフィルムズ
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