トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 女性たちのアクション映画の意義

映画『355』が打ち出した女性たちのアクション映画を作る意義

映画『355』が打ち出した女性たちのアクション映画を作る意義の画像1
C)2020 UNIVERSAL STUDIOS.C)355 Film Rights, LLC 2021 All rights reserved.

 2022年2月4日より、映画『355』が公開されている。本作はジェシカ・チャステイン、ペネロペ・クルス、ファン・ビンビン、ダイアン・クルーガー、ルピタ・ニョンゴという超豪華な女性キャストが集結した直球のスパイアクション映画であり、多様な女性たちがチームを組む内容そのものに意義がある内容となっていた。さらなる魅力を紹介していこう。

きっと「推し」ができる個性豊かなキャラクターたち

 あらすじはこうだ。あらゆるセキュリティを潜り抜け攻撃を可能とするデジタル・デバイスが盗まれた。それを手にした特殊部隊要員のルイス(エドガー・ラミレス)はパリに潜伏し、アメリカ政府相手に現金300万ドルとの交換取引を持ちかける。この非常事態に対処するため、CIAは凄腕のエージェントのメイス(ジェシカ・チャステイン)と、そのパートナーのニック(セバスチャン・スタン)を送り込む。2人は新婚夫婦を装い、オープンカフェでルイスとの取引を試みるのだが……。

 主人公たちの目的は「第三次世界大戦をも誘発してしまいかねない秘密兵器を奪還する」こと。メインの物語は多くのアクション映画にあったマクガフィン(何にでも代替可能なもの)を取り合うというもので、チームが世界を股にかけて攻防戦を繰り広げることにも、正直に言って新鮮味はほとんどない。

 だが、その昔ながらの定番のスパイアクション映画をてらいなく、まさに直球にやりきっていること、そして「女性が当たり前に」活躍することこそが、本作の美点だ。しかも、超豪華なキャストが生き生きと、それぞれ特徴と魅力のあるキャラクターを演じきっているのだから。

 実質的な主人公であるジェシカ・チャステインは最強の格闘スキルと優秀な頭脳を持ち合わせているが、実は怒りっぽくて乱暴なところもある。ペネロペ・クルスは危険な状況に身を置くことを好まず、夫と2人の息子が待つ家に帰る日々のほうに幸せを感じる心理学者。ファン・ビンビンは並外れたハッキングスキルを持ち中国医学にも精通しているが、謎めいた存在で簡単には信用できない。ダイアン・クルーガーは几帳面かつ大胆不敵で、同じく優れた身体能力と戦略的思考を持つ主人公のライバル的存在。ルピタ・ニョンゴはMI6諜報員の勤務を終えたばかりのITの専門家……などなど、長所や欠点や性格、国籍も多様となっている。

 そのような個性豊かなキャラクターが構築されているからこそ、観る人それぞれの「推し」もできるだろう。筆者のイチオシはペネロペ・クルス演じる「スパイに関してはド素人」の普通の家族想いの女性で、彼女は初めこそ「場違い」感を覚えており、半ばやけくそ気味に任務に赴く様には同情してしまうものの、次第に世界を救うエージェントとして垢抜けていく様が楽しくて仕方がなかった。彼女は同じく女性が主役のスパイアクション映画『チャーリーズ・エンジェル』(2019)でナオミ・スコットが演じた役柄にも似ているので、そちらが好きな方も大いに感情移入して観ることができるだろう。

 加えて重要なのが、主人公が初めにスパイ活動を行う上で、男性とパートナーを組んでいることだ。その関係が具体的にどうなっていくか……はネタバレになるので秘密にしておくが、女性たちの連帯感に加え、この男性パートナーの描写にも、単純な男女の恋愛だけに落とし込まない、それでいて男性を過度に貶めることもない、現代に作られる映画ならではの価値観が表れていると感じたのだ。彼を演じたセバスチャン・スタン自身が「恋を発展させる機会を得ることはほぼないが、その愛は誠実で、他のキャラクター同様に彼にも含みと複雑性がある」と語っている通りの人物像にも期待してほしい。

123
ページ上部へ戻る

配給映画