【グラフで見る】日大前理事長脱税問題の遠因にある私立大学への助成金制度
#日本大学
田中英寿前理事長の所得税法違反事件などにより、21年度の私学助成金が全額不交付となった日本大学だが、20年度の私学助成金は早稲田大に次いで全国で2番目に多い90億2613万円だったことが日本私立学校振興・共済事業団により明らかになった。(「令和2年度私立大学等経常費補助金 学校別交付額一覧」』)
日大の田中前理事長は、大阪の医療法人の前理事長から約1億2000万円のリベートなどを受け取り、税務申告を行わず5200万円を脱税したとして、21年12月20日に東京地検特捜部から所得税法違反の罪で起訴されている。
さらに、元理事の背任事件といった不祥事も相次ぎ、こうした事態を重く見た日本私立学校振興・共済事業団は、厳しい対応が必要だと判断し、1月26日の運営審議会での検討を踏まえて、日大に対する21年度の私学助成金を全額不交付と決めた。
私学助成金は毎年度12月と3月の2回、各私大に交付される。12月の第1回目では635法人853校に対して1502億3880万円が交付された。
内訳は、大学が581校で1425億985万円、短期大学が270校で76億231万円、高等専門学校が2校で1億2663万円となっている。
日大は20年10月の雲煙審議会で21年度の第1回目の12月の交付が「保留」となっていた。また、18年度にもアメリカンフットボール部の悪質な反則問題や医学部の不適切入試を受け、35%減額されていた。
しかし、すでに田中前理事長に関するさまざまな経営問題が指摘されていたにも関わらず、20年度には90億2613万円が交付されていた。
20年度の交付学校数は859校、交付総額は3077億7530万円だった。内訳は、大学が577校で2913億3074万円、短期大学が280校で162億2034万円、高等専門学校が2校で2億2422万円。
交付額を1校当たりに換算すると3億5829万円となり、大学が5億490万円、短期大学 が5793万円、高等専門学校が1億1211万円となる。マンモス大学でもある日大の交付金約90億円が、いかに大きな額だったかがわかる。
20年度の大学別の交付額は別表の通りだ。(表1)
最も交付額多かったのは、早稲田大学の92億4108万円、次いで日大の90億2613万円、慶應義塾大学の82億2204万円と続く。
上位10校のうち、早稲田大学と立命館大学を除く8校は医学部がある大学で、上位校には、医学部があるか、日大のように学生数が多いマンモス大学が並んでいる。
さて、日大に約90億円もの私学助成金は交付されていた20年度にも、59校(大学32校、短期大学26校、高等専門学校1校)の助成金が不交付となっている。このうち、大学は東京福祉大学と大阪観光大学の2校、短期大学は東京福祉大学短期大学部1校が管理運営不適正で不交付となった。
日本私立学校振興・共済事業団の「私立大学等経常費補助金取扱要領」には、助成金の不正使用や財政状況の虚偽報告などとともに、入学に関する寄付金又は学校債の収受等により入学者選抜の公正が害されたと認められるものや、学校経営に係る刑事事件により役員または教職員が逮捕及び起訴されたものといった「助成金の減額または不交付の事由」が定められている。
20年度には先の2大学のほかにも、聖マリアンナ医科大学が入学者選抜における不適切な事案により、50%の減額交付となっているほか、東京医科大学が前年度に役員の刑事処分と入学者選抜における不適切な事案によって不交付措置を受けたことで、75%の減額交付となっている。
これまでの日大の問題を顧みれば、私学助成金の交付に問題がある事案が多くあり、20年度に交付されていたこと自体が大きな問題と言えよう。
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