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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 今期の期待ドラマとガッカリドラマ3選

一番“ガッカリ”は『となりのチカラ』か『DCU』か? 今期ドラマ序盤ランキング

 冬ドラマ新作の主要作がすべて出揃い、1月28日までに第2話~第3話の放送が終わった。この序盤までの内容から、今後も楽しく観られそうな「期待作」と、期待に反して……な出来だった「ガッカリ作」を3作ずつピックアップしよう。

期待のドラマ3位 『恋せぬふたり』月曜22時45分~(NHK総合)

一番“ガッカリ”は『となりのチカラ』か『DCU』か? 今期ドラマ序盤ランキングの画像1
ドラマ公式サイトより

〈あらすじ〉
恋愛を前提としたコミュニケーションになじめない咲子(岸井ゆきの)。会社の後輩が企画した「恋する〇〇」キャンペーン商品を見にスーパーへ訪れた時、店員の高橋(高橋一生)から「恋しない人間もいる」と言われハッとする。咲子は居づらい実家を出て親友とのルームシェアを計画するが、その親友が元カレとヨリを戻したことでドタキャン。心が折れそうになった咲子は「アロマンティック・アセクシュアル」という言葉と出会い…。

 『腐女子、うっかりゲイに告る。』といった作品も生んできたNHK総合の「よるドラ」枠の新作は、他者に性的に惹かれないAロマンティック(ドラマでは「アロマンティック」)、他者に恋愛感情を抱かないAセクシュアル(ドラマでは「アセクシュアル」)を題材にしたオリジナル作品。

 といっても小難しい話ではなく、コメディ的ですらある。それでいて、丁寧に当事者の気持ちを掬い取るようなストーリーだと思ったらなるほど、2020年末に旋風を巻き起こした『チェリまほ』こと『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系)の吉田恵里香氏の脚本だった。『チェリまほ』で主人公カップルを見守る藤崎さん(佐藤玲)が原作マンガでは腐女子だったのが、ドラマ版では「恋愛をすることに興味がない」女性へと設定が変更されていたことを思い出す。

 「ラブストーリーにはならないカップル」という(日本の地上波ドラマの現状を考えると)挑戦的な設定に加え、高橋一生と岸井ゆきのがいかにも“高橋一生”と“岸井ゆきの”といった感じの役柄なのがおもしろい。脚本はじめ制作チームはほぼ別だが、同じ枠の『だから私は推しました』(2019年)とリンクする“遊び”が施されていたのも楽しかった。演出の押田友太氏は「2人の恋愛感情抜きの生活がどうなっていくのかを見守るお話」と説明していたが、さまざまな誤解や、恋愛至上主義者の考える“当たり前”に足を取られながらも、ふたりがどのようにささやかで自分らしい日々を手にしていくのか……最後まで見届けたくなる作品だ。

期待のドラマ2位 『シジュウカラ』金曜24時12分~(テレビ東京系)

一番“ガッカリ”は『となりのチカラ』か『DCU』か? 今期ドラマ序盤ランキングの画像2
ドラマ公式サイトより

〈あらすじ〉
アシスタント歴20年を超えて夢を諦めた売れない漫画家・綿貫忍(39)は、たくさんの思いを東京に残し地元に戻って筆を置いた。だが皮肉にもその直後、昔描いた人気薄だった自作が電子書籍でリバイバルヒットする。そして「これが最後」だと、再度本気で漫画と向き合うことに。そんな中出会ったアシスタントは、橘千秋(22)という美しい青年だった…。自分を一人の女性として、何より漫画家として敬意を持って接してくれる千秋に、忘れていたときめきを感じ始める忍。ところが“不自然にも”、千秋も忍へ妙なアプローチをかけてくる。そしてそんな千秋と交流する内に、忍の中に積み重なっていたある種の歪みが顕在化してくるのだった…。

 不倫ドラマを観ていたはずが、これはホラーか?と思わずつぶやきやくなる展開と演出に思わず引き込まれる、意欲的な深夜ドラマ。

 40歳になった既婚・子持ちの女性マンガ家が22歳の美青年アシスタントに迫られるも、どうやらその行動には何か意図があるようで……といったサスペンス的な要素が巧妙に視聴者を惹きつける。状況に翻弄されつつも、内に秘めた闇や狂気を垣間見せる山口紗弥加や、意味深な態度で色っぽいかと思えば、年相応の脆さや危うさを感じさせる板垣李光人の演技、そして大九明子監督の演出もさることながら、原作マンガとはエピソードの順番を入れ替えることで、よりホラー色が強まっているのがおもしろい。宮崎吐夢演じる主人公の夫もドラマではかなりモラハラ色が押し出され、山口紗弥加演じる主人公の精神バランスを危ういものにしていく。どこまで原作どおりに進むのかも含め、とにかく目が離せない。

期待のドラマ1位 『妻、小学生になる。』金曜22時~(TBS系)

一番“ガッカリ”は『となりのチカラ』か『DCU』か? 今期ドラマ序盤ランキングの画像3
Paravi公式ページより

〈あらすじ〉
新島圭介(堤真一)は、10年前に最愛の妻・貴恵(石田ゆり子)を亡くしてから、妻のいない残りの人生を“余生”だと思って生きている元愛妻家。たった一人の家族である一人娘の麻衣(蒔田彩珠)の幸せを誰よりも願っているものの、生活費を稼ぐ以外何もしてやれていないことが心苦しく、コミュニケーションすらうまく取れていない。そんなある日、ランドセルを背負った見知らぬ女の子(毎田暖乃)がこの親子を訪れる。 「わたしは10年前に他界したあなたの妻よ」 ―まだ信じられないが、妻のようだ。 突然の別れから10年。 妻はこの世に生まれ変わっていた。 止まったままの家族の時間が、再び動き出す― 

 死んだ妻が小学生になって戻ってくる……という話は、確かに東野圭吾の『秘密』(文藝春秋)を思わせるし、こうした生まれ変わり・乗り移り系のストーリーは珍しいものではない。ただ、原作マンガでは小学生になった妻(娘にとっては母)をわりとあっさり受け入れてしまうが、ドラマでは拡大放送となった初回まるまるかけて、石田ゆり子演じる貴恵が生きていた頃の幸せな時代から、その喪失を抱えきれていない今の家族の姿、そして彼らが“生まれ変わり”を訴える小学生に戸惑い、反発しながらも、徐々に彼女を受け入れていく過程が実に丁寧に描かれた。

 あちこちで称賛されている子役・毎田暖乃の熱演も確かに素晴らしいのだが、個人的にはやはり堤真一だ。メイクの力も大きいのだろうが、10年以上前の若かりし頃と、妻を失ってからの人生を“余生”として過ごしている今の姿の変貌ぶりはまさに別人で、妻の手作り弁当を食べて“生まれ変わり”という奇跡を心から信じ、号泣する1話終盤のシーンは、転生ファンタジーに強い説得力を持たせた。特に初回の牽引力は堤真一の演技力によるものも大きかったと思う。演技、演出、脚本、いずれにおいても、TBS金10らしい上質なヒューマンドラマが期待できそうだ。

 また、この『つましょー』こと『妻、小学生になる。』の作品の鍵となっているのは、妻が生まれ変わったのがアカの他人の家の子という点。初回ラストでもあったように、不用意に関わりを持てば、世間的には“事案”となるリスクを抱えている。オリジナルキャラとして配された神木隆之介の存在もあり、原作とどのように距離を取りながらストーリーを展開させていくのかも気になるところ。

 なお、優河の主題歌「灯火」にも触れておきたい。ドラマに寄り添い、包み込むような優しさと儚さに揺れる同曲は、今期ドラマの主題歌で個人的に圧倒的ナンバーワンだ。

期待のドラマ次点(4位)『ミステリと言う勿れ』月曜21時~(フジテレビ系)

 なお「期待のドラマ3位」は、『恋せぬふたり』と『ミステリと言う勿(なか)れ』とで迷った。『ミスなか』は(特に原作ファンの間で)キャスティングの是非はあるが、概ね原作どおりに作られており、懸念だった“会話劇の興を削ぐ劇伴(のうるささ)”も第3話では改善されているように見受けられ、安定してきた。

 しかし、原作に基本的に忠実であるがゆえに、今のところは原作の持つストーリーのおもしろさが牽引している印象が強く、“ドラマならではの魅力”に少々欠けていると感じたため、3位から外した。第4話の「記憶喪失の爆弾魔」との邂逅は、まさに会話劇の真骨頂となるであろうから、菅田将暉と柄本佑の対峙に期待したいところ。そして吉と出るか凶と出るか、徐々に設定や展開が原作とは違ってきているのも気になるところだ。

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