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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 有村架純と森田剛が共演『前科者』レビュー
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.671

有村架純&森田剛『前科者』 寄り添うことで、罪を背負う者は更生できるか?

対象者よりも非力で不器用な阿川佳代という存在

有村架純&森田剛『前科者』 寄り添うことで、罪を背負う者は更生できるか?の画像3
恐喝、暴行罪での前科がある斉藤みどり(石橋静河)は、佳代の元対象者だった

 コンビニでのアルバイト生活という経済的に不安定な立場ながら、佳代は正義感が強く、後先のことを考えずにトラブルの渦中に飛び込んでしまう。あまりにも危なっかしい存在だ。寄り添うどころか、近づき過ぎるあまり佳代の心は深く傷ついてしまう。それゆえにTVドラマ版で佳代の世話になった元対象者の斉藤みどり(石橋静河)らは、佳代のことが放っておけない。

 自分よりも非力な人間が、自分のことを心配し、がむしゃらに向き合おうとする。そんな人間がたった一人でも世の中にいることを知り、対象者は闇堕ちしそうになるのをグッと堪えることになる。非力で、人生経験もそれほどあるわけではない佳代だが、彼女には対象者の心の奥に眠っているものを目覚めさせる力がある。

 劇場版では、佳代が保護司になった理由が明かされることになる。佳代が誤ちを犯した人間の更生に尽力するのは、佳代自身が中学時代に負ったトラウマを癒したいがゆえだった。中学時代の佳代を演じた新進女優・田畑志真の純真さが、とても印象的だ。対象者を救うことは、中学生時代の佳代自身を救うことにもつながっていく。

 他者を支えることで、自分自身も支えられることになる。社会はどうやら、そうやって回っているらしい。寄り添うという言葉を口にすることは簡単だが、実際に問題を抱えた他者に常に寄り添い続けるのは容易ではない。保護司・阿川佳代は寄り添うことの重みと難しさを自分自身に問いかけながら、毎日を生きている。

 阿川佳代は不器用で、変わり者だ。だからこそ、彼女はさまざまな人たちから愛されている。彼女の欠点は、彼女の大きな武器にもなっている。

 

『前科者』
原作/香川まさひと、月島冬二 監督・脚本/岸善幸
出演/有村架純、磯村勇斗、若葉竜也、マキタスポーツ、石橋静河、北村有起哉、宇野祥平、リリー・フランキー、木村多江、森田剛
配給/日活、WOWOW PG12 1月28日(金)より全国ロードショー
TVドラマ版WOWOWオンデマンドAmazonプライムビデオで配信中
©2021 香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会
zenkamono-movie.jp

最終更新:2022/05/17 15:41
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