有村架純&森田剛『前科者』 寄り添うことで、罪を背負う者は更生できるか?
#映画 #パンドラ映画館
ひどく漫画チックな顔になる有村架純
森田剛は『ヒメアノ~ル』(16)以来となる長編映画出演となる。『ヒメアノ~ル』の殺人鬼役は強烈なインパクトがあった。舞台での役づくりにも定評のある森田剛が演じる工藤誠は、不幸な生い立ちの持ち主だ。子どもの頃、母親は義父によって目の前で刺殺されている。弟と一緒に入った児童養護施設では、向精神薬を職員から飲まされ続けた。薬を飲むと大人しくなるからだった。
義務教育を終えた工藤はパン工場で働き始めるが、職場の先輩から執拗ないじめを繰り返され、気づいたときにはその先輩を殺害してしまっていた。刑務所では模範囚として過ごし、仮釈放されている。
佳代との面談初日、佳代の自宅を訪ねた工藤は緊張気味に正座している。年下の佳代のことを「阿川先生」と呼ぶ。そんな工藤に、佳代はほんわかとした言葉を投げかける。
「がんばりすぎないでください。大切なのは普通だと思います。がんばりすぎると、普通じゃなくなります」
そんな台詞をさらっと口にするときの有村は、ひどく漫画チックな顔になる。原作コミックの阿川佳代そのものになりきっているかのようだ。映画はTVドラマ版の後日談という設定だが、実際には映画の撮影のほうが早かった。女優・有村架純の懐は、とても深い。
真面目な性格の工藤は、働き始めた自動車修理工場での評判もいい。修理工場の社長は工藤の仕事ぶりを評価し、仮釈放明けには社員として雇うことを約束する。佳代との面談も順調だった。工藤の更生は成功するかのように思えた。だが、工藤の前に、彼の過去を知る謎の男・実(若葉竜也)が現れ、社会復帰プログラムは大きく歪んでしまうことになる。やがて連続射殺事件が起き、仮釈放期間が終了直前だった工藤は姿を消してしまう。
保護司の役割は、あくまでも対象者を見守ることなので、事件に介入することはできない。工藤が連続射殺事件の容疑者となっていることを知り、佳代はショックを受ける。優しく寄り添うだけでは、更生させることはやはり無理なのだろうか?
TVドラマ版の佳代は保護司としての職務に忠実だったが、劇場版の佳代は保護司の職務から逸脱することになる。保護司としてではなく、ひとりの生身の人間として、過去を持つ対象者と向き合おうとする。保護司が対象者と酒を飲むことは禁じられているが、「一杯だけなら」と言いつつ佳代は泥酔してしまう。さらには中学時代の同級生・滝本(磯村勇斗)が捜査に乗り出した連続射殺事件の真相を追って、佳代は夜の街を奔走することになる。
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