有村架純&森田剛『前科者』 寄り添うことで、罪を背負う者は更生できるか?
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寄り添うという言葉は、柔らかいイメージがあり、とても便利で使いやすい。ドキュメンタリー作品のカメラは、社会的弱者に寄り添うことで、彼らの目線に映るものを捉えていく。また、傷ついた主人公に優しく寄り添う人物が現れることで、多くの劇映画はエンディングを迎えることができる。孤独な現代人が今いちばん求めているのは、同じ目線に立って寄り添ってくれる理解者なのかもしれない。
だが、社会の闇に一度堕ちた経験を持つ元受刑者に対し、優しく寄り添うだけで更生させることは可能なのだろうか。有村架純と森田剛が初共演した映画『前科者』は、寄り添うことの大切さだけでなく、寄り添うことの難しさも描いた硬派な社会派ドラマとなっている。
香川まさひと原作・月島冬二作画の人気コミック『前科者』(小学館)を原作にした、有村架純主演ドラマ『前科者 -新米保護司・阿川佳代-』全6話が2020年にWOWOWで放映された。映画はその続編となる。ドキュメンタリー畑出身、『二重生活』(16)や『あゝ、荒野』(17)で知られる岸善幸監督が、原作にはないオリジナルエピソードで、有村演じる保護司・阿川佳代のTVドラマ版のその後の姿を描く。TVドラマ版から少しだけ成長した佳代は、殺人罪で服役していた工藤誠(森田剛)の社会復帰に尽力することになる。
保護司というと、安定した職業に就き、地域社会から信頼されている人生経験豊富な人格者のイメージがあるが、阿川佳代はそんな従来の保護司像から大きく外れている。若い女性が保護司を務めること自体が非常に珍しいが、佳代はコンビニでアルバイトしながらシフトの合間を縫って、保護対象者との面談を行なうことになる。
保護司は非常勤の国家公務員だが、報酬はいっさいなし。ひとり暮らしの佳代の生活は楽ではない。コンビニの店長・松山(宇野祥平)は、佳代がバイト時間を削ってまで保護司の仕事に情熱を注ぐのが理解できない。だが、挫折した経験を持つ対象者の更生に協力できることが、佳代の生きがいだった。
コンビニの早番のシフトを終えた佳代は、自宅で手作り牛丼を用意し、刑務所から仮釈放されてきた対象者を「おかえりなさい」と笑顔で迎え入れる。バイト生活だけでは満たされないものを、佳代は保護司の仕事から感じていた。
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