映画『ノイズ』藤原竜也、松山ケンイチ、神木隆之介が見事にハマった傑作の理由
#松山ケンイチ #神木隆之介 #藤原竜也
原作コミックとは良い意味で全く異なる内容に
本作は筒井哲也による同名コミックの実写映画化作品なのだが、基本的な設定以外は全くの別物と言ってもいいほどに異なっている。
中でも、原作では主人公2人とほぼ初対面だった新米警官を、幼馴染の親友へと設定を変更したことは大きい。それでこそ神木隆之介の熱演による「優しさゆえの苦悩」が際立っていたし、何より(反吐が出るような仲間意識かもしれない)友情の寓話として、強烈に胸に突き刺さる物語へと変貌したのだから。
他にも、島に来訪した不審な男は原作ではコミュニケーションができていたが、映画ではほぼ会話も成り立たない凶暴性と不快感を体現した存在へと変貌しており、「排除しなければならない」と主人公たちが思ってしまうことへの説得力が格段に増していた。他にも原作の村を島へと変更したのは、警察監修の方にヒアリングをしていく中で、陸続きであったらこのレベルの事件を隠蔽するのは難しいとわかったことも理由の1つだったそうだ。犯罪映画としてのリアリティも追求されていると言っていいだろう。
また、原作のラストは個人的には欺瞞にも思えてしまうもので、入り組んだ物語の完成度もそこまで高くないと感じていた。だが、この映画版では友情の要素が色濃くなり、より物語の流れがシンプルかつ、愛憎入り乱れる心理劇が深く描かれ、かつ一筋縄ではいかない結末となったことで、それらの欠点は解消されていた。とはいえ、原作では映画では省かれたさまざまなトリビアや、異なる展開も描かれているので、合わせて読めばさらに楽しめるだろう。
さらに、映画での時系列をわずかに入れ替えた構成は「あれはどうなった?」と一時的に思わせ、後から「そうだったのか!」と驚きを与える効果も生んでいた。内容そのものが異なっているので原作のファンからは賛否はあるかもしれないが、筆者はその大胆な改変こそを賞賛したい。本作の他にも『鬼灯さん家のアネキ』(2014)や『町田くんの世界』(2019)など優れたマンガの実写映画化作品の脚本を手がけていた、片岡翔という名前をぜひ覚えて帰っていただきたい。
余貴美子の愚かしい町長のキャラは賛否両論?
ここまで『ノイズ』を絶賛したが、気になることもある。もっとも賛否両論を呼ぶのは、おそらく余貴美子演じる町長のキャラだろう。彼女がとある「挑発」をする様は、「こんなバカなやついるわけないだろ!」と良くも悪くも思ってしまうものだったのだ。さらには柄本明演じる農家のおじいさんもなかなかに極端なキャラになっており、余貴美子ととある「対峙」をする場面は突発的すぎて吹き出してしまうギャグと化していた。
この余貴美子や柄本明の一連のシーンは、個人的には悪意たっぷりのブラックコメディとして大いに楽しめたのだが、リアルなサスペンスとして真面目に観ている方にとっては眉をひそめてしまうかもしれない。今の時代に、女性の権力者をこれほどまでにデフォルメした愚かしい存在として描くのもいかがなものかと思う(これは現在配信中のNetflix映画『ドント・ルック・アップ』でも感じたことだった)。
だが、その「やりすぎ」感も肯定的に捉えてしまえば、とんでもない「真実」が提示されるクライマックスからラストも含めて大いに楽しめるはず。良い意味で極めて意地が悪く、単純な結末にも落とし込まない、複雑な余韻を味わえる映画を期待する方には、とにかく劇場で観てほしいと願うばかりだ。
『ノイズ』
2022年1月28日(金)全国ロードショー
主演:藤原竜也 松山ケンイチ
出演:神木隆之介、黒木華、渡辺大知 / 永瀬正敏
原作:筒井哲也「ノイズ【noise】」(集英社 ヤングジャンプ コミックス GJ 刊)
監督:廣木隆一
脚本:片岡翔
音楽:大友良英
企画・プロデューサー:北島直明
製作・企画:日本テレビ放送網
制作:クレデウス
配給:ワーナー・ブラザース映画
C) 筒井哲也/集英社C) 2022 映画「ノイズ」製作委員会
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