映画『ノイズ』藤原竜也、松山ケンイチ、神木隆之介が見事にハマった傑作の理由
#松山ケンイチ #神木隆之介 #藤原竜也
三者三様の裏表のある役柄にハマった理由
本作は最初に掲げた通り、豪華俳優陣の共演が大きな見どころ。特に、藤原竜也、松山ケンイチ、神木隆之介という日本トップクラスのスター俳優3人が、そのパーソナリティも生かしたような、三者三様の裏表のある役柄をもって最大限に表現していることは、誰もが賞賛するのではないか。
藤原竜也演じる農家の青年は、一見すると家族への愛情に満ちた男だが、「平然と嘘をつくのが上手い」ため若干のサイコ感を漂わせる。従来でクズな役を多く演じてきた藤原竜也が、今回は自身がクズだと認識した人間を殺したことを正当化する様も良い意味で皮肉的に思える。島の平穏や娘と妻の幸せを願う平和主義者が、殺人の隠蔽という最悪な形でその夢を叶えようとする「業」を、藤原竜也が体現している様に注目してほしい。
もう1人の主人公と言える猟師を演じた松山ケンイチは、表面的にはおとなしい性格だが、裏では激情を抑えているような危うさがある。松山ケンイチと藤原竜也の本格的な共演は2006年に前後編が連続公開された『デスノート』以来であり、そちらの「親友同士でもあるがお互いに腹を探り合うような疑り深さもある」関係性も彷彿とさせるところもあった。
神木隆之介は島の平穏を願うことと、嘘をつき続けることの板挟みで苦悩するマジメな新米警官に扮している。その神木隆之介は、普段の振る舞いや他者への気遣いからも「本気で良い人」が伝わりまくるお方だ。そんな彼だからこそ、警官として島の住人だけでなく、幼馴染の親友を守るために殺人の隠蔽を最初に口にしてしまうこと、そのせいでずっと苦しむ様は観ていて本気で胸が痛くなるほどなのだ。
仲間意識の欺瞞を暴く
劇中で永瀬正敏演じる疑り深い刑事が、排他的な島の住民の反応を見て「全く反吐が出る仲間意識だな」とつぶやくシーンがある。「みんなのためだから」という建前で殺人という最も重い罪の隠蔽をする物語は、普遍的に存在する閉鎖的な村社会の本質を、この言葉通りに暴いていると言ってもいいだろう。黒木華演じる主人公の妻が口にする「島の嫌なこと」も、それを違う形で突きつけている。
その「反吐が出る仲間意識」は、3人の青年たちの「友情」にさえも及んでいるのかもしれない、というのも皮肉的。彼らはお互いにお互いを信用しきるほどの、積み重なった長年の友情があり、だからこそ殺人の隠蔽に協力してしまったとも言える。その友情は、完全に間違ったものだろう。
そうした仲間意識にまつわる欺瞞は、この映画『ノイズ』ではとんでもないところへ行き着く。もちろんネタバレは厳禁なので詳細はいっさい書けないが、まさか、クライマックスからラストにかけて、単純には言語化できないほどの、膝から崩れ落ちるほどの衝撃が訪れるとは思ってもいなかった。
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