新型コロナ「スーパースプレッダー」の特定要因があきらかに 二次感染拡大防止に
#新型コロナウイルス
「スーパースプレッダー」という言葉をご存じだろうか。高いウイルスコピー数を持ち、感染症で周囲への感染力が高く、死亡率の高い患者を指す。新型コロナウイルス感染症ではスーパースプレッダーの特定要因が明らかになっていなかったが、東京医科歯科大学の研究グループが1月17日、スーパースプレッダーのリスクとなる患者の既往を明らかにした。
https://www.tmd.ac.jp/press-release/20220117-1/
研究結果の概要は以下の通り。
研究グループは、20年3月から21年6月までに同大学の大学病院に入院した、少なくとも1回以上のPCR検査が行われた患者379人を対象に、スーパースプレッダーを特定する要因について検討を行った。
具体的には、入院患者の電子カルテの情報を基に、高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症・関節リウマチ・癌・慢性腎 不全・脳梗塞・心疾患・呼吸器疾患・アレルギーといった既往歴について調査と分析を行った。
年齢や性別、喫煙歴で調整した分析の結果、これらの既往を3つ以上重複して有する患者では、既往のない患者と比較して、ウイルスコピー数が87.1倍高くなることが明らかにった。
既往歴別では、糖尿病患者では17.8倍、関節リウマチ患者では1659.6倍、脳梗塞患者では234.4倍、ウイルスコピー数が高くなることが明らかになった。
また、入院時の血液検査結果の解析では、入院時に血小板と体内で炎症や組織障害が起こると増加する蛋白質であるCRPが低い患者は、高いウイルスコピー数を有することが明らかになった。
さらに、複数回PCR検査を行った患者を分析した結果、90%以上の患者が初回または2回目の検査で最大のウイルスコピー数に達していることが判明した。
研究成果は21年12月20日、国際科学誌Journal of Infectionオンライン版に公開された。
感染症では、03年のSARS(重症急性呼吸器症候群)あるいは12年のMERS(中東呼吸器症候群の流行時から、すべての患者が等しく感染を広げるのではなく、高いウイルスコピー数をもつ特定の患者が特に感染を広げていくことが知られていた。
これらの患者はスーパースプレッダーと呼ばれ、新型コロナでもスーパースプレッダーが高い感染力と死亡率があることが知られていた。しかし、新型コロナのスーパースプレッダーの決定要因については、これまで解明されていなかった。
スーパースプレッダーを早期に見極めることは、治療および周囲への二次感染の拡大防止の観点から非常に重要だ。
研究チームでは、「今回の研究によりスーパースプレッダーを既往歴や入院時の血液検査の情報から特定することで、臨床医は個室で患者を隔離し院内感染を防ぐための注意喚起を行うなど、感染管理措置を取ることが可能になる。また、スーパースプレッダーである可能性の高い患者に対しては、特に感染の初期において注意深い感染管理措置が必要なことが示された」とコメントしている。
新型コロナの変異株「オミクロン株」が猛威を振るい、まん延防止措置が出される自治体が増加している。こうした状況の中で、スーパースプレッダーを特定することは、感染拡大の歯止めに有効だ。
スーパースプレッダーの特定には、PCR検査によるウイルスコピー数の定量的な評価が重要となってくる。政府はPCR検査体制の拡充に一段の努力を行う必要がある。
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