22年卒業予定の大学生就職内定率が上昇も…数字の裏にある楽観視できないカラクリ
#就職内定率
新型コロナウイルスの感染拡大が雇用に大きな影響を与えている中、22年3月に卒業予定の大学生の21年12月時点の就職内定率が、20年よりも上昇していることが、文部科学省と厚生労働省の共同調査でわかった。だが、その背景には大きな課題も残されている。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000184815_00032.html
これは、国立大学21校、公立大学3校、私立大学38校の大学62校、短期大学20校のほか、高等専門学校10校、専修学校(専門課程)20校の計112校、6250人の就職内定率を調査したもの。概要は以下の通りだ。
3月卒業予定者の就職内定状況および就職状況を前年の10月1日、12月1日、卒業予定年の2月1日、4月1日の4回について毎年調査している。
大学生に焦点を当てて就職内定率を見ると、12月1日時点の就職内定率は、リーマンショックによる影響で、10年から14年の卒業生は80%を割り込んでいたが、15年には80%を回復し、その後は上昇を続け、19年には87.9%まで上昇した。
新型コロナの影響が比較的に軽微だった20年卒の内定率は87.1%と19年から0.8ポイント低下だった。しかし、影響が本格化した21年卒は前年同時期の87.1%から4.9ポイントと大幅に下落し、82.2%だった。
だが、22年卒業予定者については、前年同時期から0.8ポイント上昇して、83.0%となり、改善が見られたのだ。(表1)
男女別では、男子は81.3%と前年同期から0.9ポイント改善、女子は85.0%と0.7ポイント改善した。改善幅は男子の方が大きいものの、内定率は女子の方が高くなっている。
文系・理系別では、文系は82.1%と前年同期から0.8ポイント改善、 理系は87.3%と1.3ポイント改善している。 (表2)
さて、就職内定率の改善は一見、新型コロナによる採用の悪化に歯止めがかかったかのように見える。しかし、大学生の就職希望率を見ると、その様相は変わってくる。
就職希望率とは卒業を控えた大学のうち、どの程度が就職を希望しているのかを示すものだが、12年以降に上昇を続けてきた希望率は、21年卒に10年ぶりに低下し、20年卒の79.4%から0.4ポイント低下し79.0%となった。
22年卒業予定者の希望率は、さらに21年卒から1.3ポイントと大幅に低下し、77.7%となっている。
男女別では男子が20年卒74.2%→21年卒74.0%→22年卒業予定者72.5%と低下、22年卒業予定者は前年同期に比べて1.5ポイントも低下した。女子も20年卒86.6%→21年卒85.9%→22年卒84.9%と低下し、22年卒業予定者は前年同期に比べて1.0ポイント低下した。(表3)
つまり、就職内定率の改善の一方で、就職を希望する大学生そのものが減少しているということだ。これは、新型コロナが新卒採用に影響を与え始めた21年卒の希望率から低下が始まっているため、大学生が採用状況の悪化に対して、「就職をしない」という選択を行っていることが要因と思われる。
そして、内定率の改善が就職率の改善につながるとは必ずしも言えないのだ。
日本銀行の21年12月調査の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の新卒採用計画は、20年度(21年3月卒)が大企業、中堅企業、中小企業の合計で前年度比2.4%減少だった。
21年度(22年3月卒)の採用計画は、21年6月調査から12月調査の前年度比の変化では大企業が10%減→10.3%減、中堅企業が10.4%減→11.2%減、中小企業が1.6%減→3.8%減で、合計は6.8%減→8.0%減と、採用の減少幅が拡大している。
つまり、文科省と厚労省の合同調査で就職内定率が改善していても、日銀の調査で短観では採用人員は減少幅が拡大しているのだ。
日銀短観の12月調査では22年度(23年3月卒)の採用計画は、大企業が前年度比で0.9%減、中堅企業が同3.0%増、中小企業が同8.5%増の全体で同3.9%増と明確な回復傾向を示している。
ただし、懸念材料もある。この調査は新型コロナの変異株であるオミクロン株の感染が爆発的に拡大する前のものであり、22年度の新卒採用計画がこれを織り込んでいないことだ。
景気動向、あるいは新型コロナのような災厄による新卒採用の減少は、やがて就職氷河期世代を生み出し、将来における大きな社会問題になる可能性を秘めている。
多くの大学生が、希望する企業に就職できることを祈るばかりだ。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事