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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.670

極上の韓国映画を思わせる犯罪ミステリー 佐藤二朗が二面性を見せる『さがす』

本人が気づかない限り、手にすることができないもの

極上の韓国映画を思わせる犯罪ミステリー 佐藤二朗が二面性を見せる『さがす』の画像3
蒸発した父親は今はどこに? 失踪者があまりに多く、警察は本気で探そうとしない

 姿を消した父親を探すことで、楓は多くのことを学ぶ。どんなにしょぼくれた家庭であっても、それを維持していくのは大変な労力が必要なこと。闇の裏社会があることで、明るい表社会が成り立っていること。そして、父親が欲していた報奨金300万円では、幸せは到底買えないこと。どれも義務教育では教えられないことばかりだった。

 物語の終わりに、楓はようやく父親を見つけることに成功する。だが、苦労して見つけ出した父親は、もはやかつてのノー天気にヘラヘラと笑っているダメ親父ではなくなっていた。成長を遂げた楓の目には、父・原田智は以前とは異なる別人として映っている。

 猟奇的なシーンも含め、ヘヴィなミステリー映画となっているが、観客はスクリーンから目を背けることはできない。社会の闇の暗さを知ってしまった楓は、それでも懸命に前向きに生きようとする。それは闇の深さと同時に、生きていく上で大切なものも同時に見つけることができたからだ。

 少女探偵・楓が気づいた大切なもの、生きていく上でのささやかな希望を、観客は上映時間123分間にわたってスクリーンを凝視し、「さがす 」ことになる。どれだけお金を払っても、幸せは決して手に入れることはできない。本人が気づかない限り、それは永遠に手にすることができない。そして、多くの人は、それを失ってから初めて気づくことになる。

 

『さがす』
監督・脚本/片山慎三 共同脚本/小寺和久、高田亮
出演/佐藤二朗、伊東蒼、清水尋也、森田望智、石井正太朗、松岡依都美、成嶋瞳子、品川徹
配給/アスミック・エース PG12 1月21日(金)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー
©2022『さがす』製作委員会
sagasu-movie.asmik-ace.co.jp

最終更新:2022/05/17 15:41
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