トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 千鳥・大悟のパンティーと「空気感」の話

千鳥・大悟のパンティーと「空気感」の話

ノブ「(トミーズの)雅さんから言われたことがあって」

 そんな千鳥が15日の『おかべろ』(関西テレビ)にゲスト出演。千鳥の2人が“大阪のお父ちゃん”と慕うトミーズとの共演だった。

 トミーズを知らない世代・地域の人も少なくないだろう。トミーズ雅とトミーズ健の2人からなる彼らは、大阪の芸人養成所であるNSCの第1期生。同期はダウンタウンやハイヒールだ。芸人としてダウンタウンなどよりも早くに注目を集め、東京で活躍していた時期もある。が、現在の活動拠点はほぼ関西だけ。関西では20年近く『せやねん!』(毎日放送)という土曜の生放送番組に出演している。主に雅がMC的なポジション。健は共演者にイジられるポジションだ。

 そんなトミーズと千鳥の出会いは、トミーズが担当していたラジオ番組だったらしい。『おかべろ』で改めて振り返られたその出会いのエピソードは印象的だ。生放送の本番に大悟は大遅刻。例のごとくお酒が原因のようだ。遅れてきた大悟は、スタッフに怒られながらトミーズ雅の前に突き出された。当時の雅はまだ40代で、ノブいわく「バリバリの頃」。そんな雅に「何しとったん今まで」と聞かれた大悟は、イチかバチかの賭けに出た。

「イチかバチかで『さっきまで飲んでました』って言ったら、めちゃくちゃ怒られるかなと思ったら、雅さんが『おもろい』って」

 雅は「僕の判断は、面白いか面白くないかだけやから」と当時を振り返る。その遅刻がきっかけでトミーズとの関係が始まった。その後も千鳥は雅の前で粗相を繰り返したようだが、そのたびに雅は「おもろい」と評価してきたという。

 当時はまだ世間的に無名だった千鳥。しかし、雅の後押しもあり『せやねん!』のレギュラーに抜擢されるまでになる。レギュラー加入当初の千鳥は、番組のロケでもあまり結果を残せなかったようだが、徐々に彼らの自由なロケのスタイルがハマりはじめる。そこには「この2人は(演出せずに)ほっといて。ほっといたら絶対におもろいから」といった雅のスタッフへの指示もあった。ノブは「そのひと言ですね、ホント我々が現在あるのは」と述懐する。

 また、若手時代のノブは、雅から「番組の極意」を教わったことがあるという。その「極意」とは「番組では空気を大事にしろ」というもの。雅は自身の言葉の意味をこう語る。

「(テレビは)言葉とか映像とか送ってるやん。もっと送ってるのは空気やねん。空気感。この空気感いいなって空気を作らない限り、心地よくならないから、見てる人が」

 なるほど、空気感。千鳥が食べているだけで面白いのも、言葉や映像より前に2人の空気感、10代の頃からお互いに美味い美味いと言って笑い合っているようなそんな空気感が、テレビを通して伝わってくるのが大きいのだろう。プリミティブな、原初的な、場合によっては粗野に見えるような、そんな感覚。それを面白いと笑い合う空気感が、2人を通して見る側に伝染していく。

 で、さらにいうと、千鳥の大悟だけなぜいろいろ許されているのか問題を解く鍵も、このへんにあるはずだ。ここ数年、コンプライアンス、ポリティカル・コレクトネス、キャンセルカルチャーといった言葉がよく聞かれるようになった一方で、それに正対するような酒、タバコ、パンティーが代名詞な存在が徐々にテレビで活躍の幅を広げ、今では盤石な地位を築いているように見えるという矛盾を解く鍵が。テレビは遅れていると断じるだけでは取りこぼしてしまうような何かが――。

 最後にややこしい話に足を踏み入れてしまった。

飲用てれび(テレビウォッチャー)

関西在住のテレビウォッチャー。

サイト:記事一覧

Twitter:@inyou_te

いんようてれび

最終更新:2022/01/19 11:00
12
ページ上部へ戻る

配給映画