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新聞の発行部数20年で約1700万部減少…「志望学生も非常に少ない」取材活動にも打撃

新聞の発行部数20年で約1700万部減少…「志望学生も非常に少ない」取材活動にも打撃の画像1

 新聞の衰退が止まらない。新聞協会はこのほど、21年(各年10月)の一般紙発行部数が3065万7153部となったと発表した。01年からの20年間で1690万1899部(35.3%)も発行部数が減少した。発行部数|調査データ|日本新聞協会pressnet.or.jp)

 一般紙の直近の発行部数のピークが4740万1669部で、04年からは一貫して発行部数は減少を辿っている。特に、09年からは年間の減少率が1%を超え始め、14年から減少に拍車がかかり、18年からは年間5%以上の減少が続いている。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあるのか、20年にはこれまでの最大の年間減少幅となる6.95%も減少、21年も5.54%の減少となった。(表1)

新聞の発行部数20年で約1700万部減少…「志望学生も非常に少ない」取材活動にも打撃の画像2

 発行部数の減少とともに、1世帯当たりの購読部数も減少が続いている。01年には1世帯当たり1.12部の購読があったが、08年には1部を割り込み0.98部となった。その後も減少は続き、21年には0.51部にまで低下している。これは、2世帯に1世帯は新聞を購読していないことを示している。

 同協会の調査によると、日刊紙113紙(朝・夕刊のセット29紙、朝刊単独73紙、夕刊単独11紙)の21年10月の全国発行部数は3302万7135部だが、このうちセットは648万4982部と19.6%にとどまっている。

 島根県、徳島県、香川県、宮崎県の4県では、セット購読部数はゼロ。鳥取県、愛媛県、長崎県の3県では1部だ。

 同様に夕刊でも、大分県は6部、鹿児島県は10部、沖縄県は12部、長崎県は14部、熊本県は19部と20部を下回っている。

 こうした発行部数の減少は、経済産業省の第3次産業活動指数にも鮮明に表れている。この指数は15年を100として、各産業の動きを指数がしたものだが、新聞業は16年の97.5から18年には89.7、20年には78.9、21年には72.6にまで低下した。(表2)

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 ただ、紙媒体の出版業が21年の69.1、週刊誌が53.1、月刊誌が58.0まで低下しているのに比べると、新聞は健闘している方だろうか。

 発行部数の減少は広告にも影響している。同指数の新聞広告、雑誌広告の動きを見ると、21年には新聞広告は50.0、雑誌広告は43.3と半数以下に低下している。同指数と広告料収入が、必ずしもリンクしているわけではないが、それでも新聞、雑誌の苦境が表れている。半面、インターネット広告は21年に152.1まで指数が上昇し、その好調ぶりが伺える。(表3)

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“鶏が先か、卵が先か”だが、発行部数の減少、広告料収入の減少は、新聞というメディアの根幹である取材活動にも影響を与えている。

 知人の大手紙記者は「今は、夜回りにも制限がある。昔のように、社の車を夜中まで使う、あるいは必要なタクシー代は自由に使えるような時代ではなくなった。取材先との会食も制限されている。まあ、新型コロナウイルスの感染拡大により、自粛ムードが強いことも影響しているのだが」と自嘲的に話している。

 別の大手紙記者は「大学生にとって、マスコミ、新聞社は魅力的な職業ではなくなっているようで、近年は志望学生が非常に少ない。もっとも、新聞社側にも多くの新規採用ができる経営体力がなくなっているのだが」と嘆いている。

 インターネット世代だけではなく、高齢者も新聞の購読をやめ、ネットニュースを見るようになった。ネットニュースには、まだまだ、その信ぴょう性が疑われるサイトが多いのも確かだが、メディアとしての役割がネットに移りつつあるのは疑いようがない。

 ただ、メディアは世の中を映す鏡であり、政治を監視する重要な役割を持っている。その中核にある新聞が衰退することで、日本のメディアが衰退していくことは避けなければならない。果たして、ネットメディアに新聞の代役が務まるようになるのだろうか。

 先日、新聞販売店のセールスが自宅を訪れ、販売店潰れそうなほど販売部数が減少しているので、何とか購読の契約をして欲しい」と頼まれた。

 その新聞を含めて、我が家では8年先まで新聞の購読予約をしているのだが、「10年先でもいいので、何とか契約して欲しい」という。

“10年後にこの新聞は発行しているのだろうか”との疑問を持ちながら、判を押した。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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最終更新:2022/01/17 06:00
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