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韓国映画は多様性をどう描くか『ユンヒへ』『オマージュ』『スティール・レイン』

女性蔑視の問題を扱いながらも、別の視点も携えた『オマージュ』

韓国映画は多様性をどう描くか『ユンヒへ』『オマージュ』『スティール・レイン』の画像3
©2021 JUNE Film. All Rights Reserved.

【ストーリー】
仕事に行き詰まった韓国の女性映画監督ジワンは、1960代年に実在した女性監督ホン・ウンウォンの作品『女判事』を修復する仕事を依頼される。数少ない当時を知る関係者を訪ね、作品を探求していくうちに、自国の女性映画監督が辿った苦難な道のりを自分自身とも重ねていくのだった……。

 世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数2021」で、韓国は102位となり(ちなみに日本は120位)、前年の108位から少しランクアップした。しかし、ジェンダー平等への道のりはまだ遠く、グローバル化を目指す韓国は、このマイナスイメージから脱却したいと常に考えている。

『はちどり』(2018)、『82年生まれ、キム・ジヨン』(2019)、『野球少女』(2019)の女性主人公たちのように、社会から要請される「女性だから」「女性なのに」という固定概念に苦しみながらも先へ進もうとする様子を描いた韓国映画は、日本でも複数公開されている。
こうしたテーマの韓国映画が多く制作され、世界に発信されている状況は、もちろんジェンダー平等への世論の高まりがあってのことだろうが、一方で、ある種のプロパガンダ的な側面がないとも言えないのではないか。

 2021年10月に開催された「第34回東京国際映画祭」で、筆者が合計21本の新作(事前の試写を含めると28本)を観て感じたのは、男女差別や多様性を描いた作品が非常に多いことだった。言い方には気をつけるべきだが、そういった問題を扱った作品こそが、海外マーケットにおいてはトレンドであるとも感じられる。

 一方、同映画祭で上映された『オマージュ』は、女性差別を描いていながらも、従来の作品とは少し違った目線が反映されていた。

 主人公の売れない女性映画監督・ジワンは、韓国で2番目の女性監督であるホン・ウンウォンが1962年に撮った『女判事』の修復を依頼される。その過程で、当時の韓国における女性の社会進出への厳しい目線と、現在でも変わらない固定概念が描かれる。一方、そうしたジェンダー問題への批判を踏まえた上で、観客に問い返すような側面もあったのだ。
 
 当時の女性差別的な映画業界で、ホン・ウンウォンはそれでも自分の作品を世に残そうと奮闘していたことを目の当たりにしたジワンは、自分自身を見つめ直していく。ところが、ある病気がジワンを苦しめることによって、女性ならではのつらさをも容赦なく描いている。

 言うまでもなく、主人公のジワンは、同作の女性監督であるシン・スウォンの投影である。この世界には男女差別や、保守的な概念による女性蔑視がいまだ存在している。それは、韓国社会や映画業界だけに限らないことだろう。同作では、その事実を批判しつつも、個人的不満や能力不足を、そこに混合してはいないだろうか、といった問いの視点が交えてあるように筆者は感じられた。そういった意味で、極端にフェミニズムに寄り添ってはおらず、客観的に主人公(=監督自身)を描いた作品であったように思える。

 今のところ日本で一般劇場公開がされるかは未定の同作だが、男女差別について考えるなら、観るべき作品だといえるだろう。

『オマージュ』
監督:シン・スウォン キャスト :イ・ジョンウン、クォン・ヘヒョ、タン・ジュンサン

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配給映画