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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 芸人たちの“物語”と「まーごめですね」

オズワルド、錦鯉、ハライチ…芸人たちの“物語モード”と「まーごめですね」

ハライチ・澤部「M-1の密着みたいになってますよ?」

 M-1のその後を追う番組はさらに続く。8日の『ゴッドタン』(テレビ東京系)は、昨年末に放送された「マジ歌選手権」の未公開シーンを集めた回だった。そこでカメラが向けられていたのは、M-1ラストイヤーに敗者復活で勝ち上がり、決勝進出を果たしたハライチだ。

 『ゴッドタン』のマジ歌の収録は、M-1準決勝と重なっていたらしい。マジ歌のリハーサルを終えて、M-1の準決勝へ。その後、漫才を終えた2人はマジ歌の本番を迎え、さらにM-1の決勝進出者の発表会場へ、というスケジュールだったのだとか。

 そんなハライチを捉える画面は、いつもの『ゴッドタン』の質感と少し違ってドキュメンタリータッチだ。スタッフからの「(M-1の)最高順位っていくつでしたっけ?」という問いかけに、「最高順位は5位じゃないですか? 初めて決勝に出たとき」と澤部が答える。が、すぐさまツッコミを入れる。

「M-1の密着みたいになってるんですよ。ABCの人じゃないですよね?」

 ABCとは、『M-1グランプリ』の制作局である朝日放送のことだ。その後も『ゴッドタン』によるアナザーストーリー風のインタビューが続くなかで、澤部は“物語る”モードへギアチェンジ。そして、「でももう、サンパチマイクの前で岩井と2人で楽しくしゃべれたら、それはもう漫才……」と語りかけたところで、ノリツッコミのように「ABCの密着みたいですよ」と指摘するのだった。澤部は言う。

「一番恥ずかしいんですよ。結果出たあとにこれ見られんの」

 M-1をめぐる物語は年々熱くなっている印象を受ける。一方で、それを冷ますようなM-1の物語モードへのイジり、何かを語っちゃう/語らせちゃう自分たちへのちょっとしたツッコミも、こういった形で出てくるのが面白い。

 こんな感じで年をまたいで続くM-1語りだけれど、その持続期間は数週間で終わるものではない。20年近く前の話が今でも振り返られたりする。たとえば、6日の『やすとものいたって真剣です』(朝日放送)。この日のゲストは、徳井義実(チュートリアル)、小沢一敬(スピードワゴン)、恋さん(シャンプーハット)だった。彼らは同期の芸人たちだ。

 ここで徳井は、同期のブラックマヨネーズが2005年のM-1で優勝したときのことを振り返る。ブラマヨの2人は、ビジュアル的にもネタの内容的にも、当時劇場に来ていた中高生たちからの人気がなかったらしい。しかし、M-1決勝の舞台で結果を出したブラマヨは、一気にスターダムへ。そのときの思いを、徳井は「お笑いの世界が嬉しくなった」と表現する。

「やっぱ単純におもろかったら売れるやんって思って。お笑いってめっちゃピュアな世界やなと思って。事務所の力とか、誰々のプッシュとか、なんにもないから。めっちゃピュアやなと思って。お笑いの世界が嬉しくなった瞬間ではありましたね」

 さらに、抜群に面白いけどさすがに売れるのは無理だと周囲に思われていた野性爆弾も、時間がかかったが結局売れた。海原やすよも、ハリウッドザコシショウの例を挙げながら同調する。ただ、一方で彼女は次のようにも指摘する。

「だからでも、お笑いって難しいのは、がんばって続けときなさいよっていう1個もあるやん。でも、それを勘違いして諦めずに辞めない人もいるやん。残酷じゃない?」

 過去最高の6017組の漫才師がエントリーした2021年のM-1グランプリ。出場者が膨れ上がったのは、おいでやすこがの影響でピン芸人同士のユニットが増えたためではないかとも言われている。

 そして、そんな昨年の大会では錦鯉が史上最年長で優勝した。おじさん芸人のシンデレラストーリー。錦鯉の密着番組は、すでに放送された9日の『情熱大陸』(TBS系)を筆頭に、今後も続きそうだ。もしかするとそんな物語に駆動され、今年の大会では年長の芸人がコンビを組み直して出場、みたいなケースが増えるのかもしれない。海原やすよが厳しめに指摘するような状況も、増えるのかもしれない。なぜなら、お笑いは“ピュア”だから。

 新年早々、ちょっと複雑な感情になってしまった。何というか………まーごめです。

飲用てれび(テレビウォッチャー)

関西在住のテレビウォッチャー。

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いんようてれび

最終更新:2022/01/11 20:00
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