“銀歯”で金属アレルギーが発生 メカニズムを東北大研究Gが解明
#歯科
虫歯を治療した時にかぶせる“銀歯”で金属アレルギーが引き起こされることをご存じだろうか。
これまで、銀歯が金属アレルギーの原因となっていることは判明していたが、どのような仕組みによるものかは明らかになっていなかった。東北大学と札幌医科大学の研究グループがその仕組みを解明、21年12月27日に「歯科金属アレルギーにおけるアレルギー抗原の発現機構を解明」として発表した。
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2021/12/press20211227-01-mhc.html
発表の報告書を要約すると以下のとおり。
金属アレルギーは、金属製品から汗や唾液などによって溶出した金属イオンが皮膚や粘膜から浸透して、体内の自己タンパク質と結合することが発症のきっかけと考えられている。
金属アレルギーに罹患している人は年々増加しているといわれおり、ジュエリー・アクセサリー等の装飾品、メイク品など「金属(成分)」に触れる機会が多く、今後も増加していく見込みだ。
この装飾品やメイク品などを利用する割合が男性よりも女性の方が多いため、金属アレルギーは女性に多いことがわかっている。
近年では、金属アレルギーに配慮・対応した製品が年々増加してきているものの、それでも金属アレルギー罹患者は増加している。
虫歯の治療では、銀歯の材料としてパラジウムが用いられる。パラジウムは保険診療が適用されていることで、歯科治療で広く用いられている。パラジウムを使用せず、金属アレルギーに罹患しないように、メタルフリー治療を推奨する歯科医もいるものの、多くの歯科医では、金属アレルギーに対する説明はなく、パラジウムが治療に用いられている。
これまで、虫歯の治療に用いられるパラジウムの場合、酸性の食物、口内に残った食べ物の分解、口腔細菌の代謝産物によって溶出しやすいと考えられていた。
虫歯治療に用いたパラジウムが溶け出し、抗原提示に何らかの影響を与え、病原性T細胞を活性化させることで金属アレルギーを引き起こすと考えられていたが、金属によるアレルギー性 T細胞の活性化のしくみは不明だったという。
そこで、研究チームは樹状細胞株にパラジウム溶液を添加。すると、免疫反応を引き起こすMHC(主要組織適合性遺伝子複合体)クラスIが細胞に取り込まれた。
これにより、パラジウムによるMHCの細胞内在化が発見された。内在化は一過性のものだったが、この動きに伴い抗原ペプチドの置き換わりによりアレルギー抗原が現れ、病原性T細胞が活性化。金属アレルギーを発症することが明らかになった。
アレルギーやリウマチなどの自己免疫疾患では、アレルギー抗原や自己抗原にT細胞が過剰に活性化することによって炎症が起こる。
この研究結果により、明らかにされていなかった虫歯治療における銀歯にパラジウムアレルギー発生するメカニズムが明らかになった。これまで、金属アレルギーの治療はその原因が不明だったため、原因となっている金属の置き換えや、抗炎症薬の投与などの対処療法にとどまっていた。
今回、パラジウムによって引き起こされるMHCクラスIの細胞内在化を抑制することや、抗原ペプチドの置換を防ぐこと、アレルギーの原因となる抗原ペプチドを特定することなどにより、研究チームでは、「金属アレルギーの新しい治療法の開発が期待できる」としている。
虫歯治療の際には、保険適用される金属について歯科医師の説明を求め、よく理解した上で治療を受けることが大事だ。だが、それよりも重要なのは、日々の歯磨きをしっかりと行い、口内ケアを十分に行うことで、虫歯にならないこと。そうすれば、不必要な金属アレルギーの罹患は避けることができる。
この研究は21年12月23日にFrontier in Immunologyに掲載された。
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