矢口史靖監督『ひみつの花園』お金大好き!銀行員が5億円目指して始めたのは…
#宮下かな子と観るキネマのスタアたち
“視聴者が感情移入出来ない”珍しいタイプの主人公
白黒はっきりしていて、ただ真っ直ぐ目標に向かって突き進む。ちょっと不気味さもある天然すっとぼけ感は唯一無二で、西田尚美さん演じる咲子のこのキャラクター性こそ、作品の最大の魅力。
考えてみると、物語って基本的に起承転結の構成で成立していて、その展開に沿って主人公の感情が大きく揺らぎ、視聴者はそんな主人公に心動かされるのが一般的だと思うのですが、この作品では、主人公・咲子の感情が揺れる場面が全く無いんですよね。迷ったり悩んだり落ち込んだり悲しんだりすることがないので、視聴者が感情移入出来ない主人公。近年ではあまり見ない主人公像かもしれません。
感情の揺れを見せない咲子ですが、ほんの少しだけ、変化を感じるシーンがあります。それは、助手の江戸川との会話の場面。
江戸川「なんでそんなに頑張れちゃうの?」
咲子「お金欲しいからかな」
江戸川「なんか欲しいものでもあるの?」
咲子「だからお金。……あれ?」
江戸川の質問にふと、咲子自身が自分の変化に気付くのです。目標達成のためにお金を使うことを知り、スーツケースを手に入れるというゴールよりも、そこへ向かう道のりから感じる達成感が、人生を豊かにしていること。そういう喜びに気付いたのではないかと思います。
さぁ、咲子は5億円の入ったスーツケースに辿り着くのかどうか……それは是非、本編ご覧になって確かめてみてください。
欲しいものは世の中に沢山溢れているし、お金があれば何でもできる。しかし、生きる上で、本当に大切なものってきっとお金や物ではなくて、夢や目標に向かって歩むプロセスだったり、それを叶えた時の達成感や経験が、人生を豊かにしてくれる。形ではないものなんだぁと思います。
主人公咲子に振り回されながらも、きっと人生を豊かにしてくれる映画の1本になると思います。年の始めに是非、ご覧ください!
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