矢口史靖監督『ひみつの花園』お金大好き!銀行員が5億円目指して始めたのは…
#宮下かな子と観るキネマのスタアたち
あえてチープに見せるユーモア
まずこの作品でたまらないポイントが、B級感漂うチープさ。低予算で制作されたというこの作品は、時々目を疑うようなカットが入り込んでいるんです。
例えば川に投げ出される咲子のカット、これがもういかにも人形。その後、川に流されていく咲子ももちろん人形感バレバレだし、地下水へ流されていく断面図のカットはおそらくミニチュアを撮影したもの。あえてこの手作り感を見せているのか否か分からないですが、5億円を巡る物語だというのに、それに対比するような映画全体のチープさが、ユーモアあるなぁと感じます。
さぁ、5億円を手に入れると決めた咲子は、ぐーたらと過ごしていた毎日が一変!事件について調べ直し、記憶を頼りにスーツケースが沈んだ池を目指しますが、思うように上手くいきません。そんな時、樹海の専門家としてテレビに出演していた多摩川大学の森田教授(内藤武敏)を見ます。目をギラギラさせ飛ぶように会いに向かいます。大学を訪問し、森田教授と助手の江戸川(利重剛)にどうしたら樹海に行けるか尋ねると「うちに入学して勉強すればいける」と言われる。それを聞いた咲子は、なんと銀行に辞表を出し、一人暮らしの家を借りて受験勉強をスタートさせるのです。
猛勉強の成果で運良く合格し、大学で勉強に励む咲子は、その後も5億円を手に入れるために必要なことを次々と始めます。運転免許証の取得、ロッククライミング、スキューバ、水泳……。大好きなお金を惜しむことなく使い、機材も揃え、お金がなくなれば夜のバイトを始める。ちなみに教習所の先生に伊衆院光さん、水泳教室の先生に木村多江さん、ロッククライミングの先生に田中要次さん等、かなりインパクトのある豪華な先生方にも是非注目を。
着実に技術を身に付けていく咲子ですが、更に水泳とロッククライミングの賞金付きのレースに参加することになれば、目をギラつかせてレースに挑み優勝するありさま。その姿に家族をはじめ周囲の人々も驚きを隠せません。
「原動力は何ですか?」というインタビュアーの問いに対し、咲子の答えは非常にシンプル。「お金欲しいから。」そう、全てはお金のため。咲子は5億円の入ったスーツケースを手に入れるために、必要なことをしているだけなのです。
自分が欲しいもののために必要なことを成していく、このシンプルな考えに、私はいつもハッとさせられます。ぐちゃぐちゃと思い悩んでいないで、自分が得たいものに向かって、やるべきことをやれば良いだけじゃないか! そう思うと、何かに飛び込むのに臆病になっている自分や、夢の途中にいるのに余計な邪念を浮かべてしまう自分が馬鹿らしく思えてきます。咲子のように淡々と生きるのは現実世界では難しい事かもしれませんが、目標達成までの道のりって、案外シンプルなんじゃないか、そう思えてきます。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事