2021のお笑い王はドキュメンタリが似合う?『家つい』に錦鯉渡辺と鈴木もぐら再登場
#家、ついて行ってイイですか? #檜山豊
吉本芸人独特の上下関係が垣間見えた鈴木もぐら回
続いてはキングオブコント王者、空気階段・鈴木もぐらが登場。こちらは高円寺の駅前で、本人がインタビューを受けている。取材は5年前で、先輩にもらった服を着て、先輩にもらったリュックを背負い、スマホ代わりのタブレットで電話している姿に笑ってしまった。
家賃17000円が払えず、5カ月滞納して家を追い出され、先輩の家に転がり込んで2カ月目。先輩から命じられたルールは守れず、見事なクズっぷりを発揮する鈴木もぐら。先ほどの錦鯉渡辺さんとは大違いだ。
先輩のボディソープは勝手に使うし、3日以内に洗えと言われた食器も洗えない。決して広いとは言えない家のロフトに住むことを許され、大事に使うよう言われているその場所でさえも、禁止されているタバコを吸ってしまう。見るに堪えないクズ芸人だが、このクズ芸人が5年後に日本で一番面白いコント師になるのだ。
これだから人生は面白い。ちなみにこちらのVTRを見て真っ先に思ったのは、吉本芸人独特の上下関係の素晴らしさだ。
昨今、社会に長年常識とされていた“年齢や社歴に比例した上下関係”の概念は消えつつある。飲み会では上司へお酌をしなくても良いし、下の立場であっても自分の意見を主張することを生意気と捉えない傾向にある。逆に上司は、部下が働きやすい環境を作るように努めないといけない。
そんな時代に吉本興業の芸人界隈は真逆だ。時代錯誤な上下関係がいまだに色濃く残っている様子だった。テレビや舞台上ではそう見えないかもしれないが、プライベートでは先輩に対してフランクに話すなんてあり得ない。先輩が言うことは絶対。どんな状況でも先輩の呼び出しには従い、どんなに眠くても先輩が帰らない限り自分も帰れない。後輩がそうする代わりに先輩は後輩の事は何があっても面倒を見る。自分の懐が厳しくても、慕ってくる後輩へご飯を奢り面倒をみる……まあさすがにそこまで無くなったと思うが、世間一般より上下関係が厳しいのは間違いない。
鈴木もぐらがなぜキングオブコントの王者になれたのか。それは彼のクズさはさておき、人間的に可愛がられ、多くの先輩が気にかけてくれたからだと思う。
こうやって見ると、先輩と後輩、上司と部下という関係性が、ただ権力を振りかざして裸の王様を造り上げるのではなく、お互いの足りない部分を補い、尊敬の上に成り立つものだとしたら、決して悪いものではない気がする。先輩がいなければ、今のもぐらはいなかったように思う。
一見このふたつの話はまったく違う話に見えるかもしれないが、どちらにも言えることは「継続は力なり」ということだ。
物事を続けるにあったての動機や努力を惜しまない姿勢は、この番組のように千差万別、十人十色だと思う。少々クサくなるが、人生というドラマの主人公は自分しかいない。今がどんなに苦しくともハッピーエンドになる物語を描いてほしい。
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